ヴァンパイア騎士 -蒼の姫-

白い薔薇と滴る雫
1ページ/3ページ


昼間の街は人が多くて、なんだかその景色さえも遠いものに感じる。この間までは自分もそっち側だったはずなのに、境界線の向こう側、そんな感じだ。
理事長と久々に会って、ちゃっかりお使いを頼まれてしまった。と言っても、大した用事ではないんだけど。


「......姫咲様?」


聴き覚えのある声に振り返ると、腰まで伸びた赤髪を揺らす茉華が立っていた。異質な存在であるのに、人間の生活と同化しているように見えるのは気のせいか。


『茉華...。何でここに?』
「私はただの散歩です。姫咲様は?」
『ちょっと頼まれ事』
「そうですか。お体は大丈夫ですか?」


昼間のこの時間帯に外に出ているからか、茉華の表情は少し険しい。
これが茜菜だったらきっと、道の端に連れられて軽くお説教を受けるとこだったけど、茉華は私が手早く用事を済ませて帰る方が賢明だと踏んだんだろう。


『ええ、長時間出ている訳ではないから』
「用事がお済みでしたら、お早めに学園へ戻られてください。気分が悪くなられるかもしれませんので」
『...そうね。貴方たちに心配をかけないようにね』


茉華が表情を緩めた。
それが何か意味を含んでいることに気付いたけど、知らないフリをして、背を向けた。











(気付かぬうちに)
(陽光が身体を蝕んでいく)

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ