Shine blast

□ひとつの決別
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今日の練習が終わって、片付けも終えて合宿所に戻る。すぐに食事の準備を始めて、出来上がったところで皆を呼びに行く。

「おい疾瀬〜、なんか呼ばれてるぞ」
『え、私ですか?』
「ああ。髪短くて、なんか翔陽っぽい女子」
『日向くんっぽい....?』

誰だろう。
誰からもここに来るっていう連絡は来てないはずだけど...。

「ここの入口のとこで待ってるから、とりあえず行ってこいよ」
『はい、ありがとうございます!』

食堂へ向かう西谷先輩にお礼を言って、入口まで走った。



入口が見えて、近くなってから走るのをやめて歩く。
暗くなった外の景色と、入口の電気で、そこにいる人物が見えた。


『........悠亜?』

振り返ったその人物は、かつての仲間。
柊華と共に、あたしをバレーの道に引き戻してくれた人物だ。

「真夜!!久しぶり!!」

がばっと抱きつかれて少しよろける。
あたしとは10cmぐらい違うけど、跳躍力が半端無い。髪も短いし......ああ、だから西谷先輩は日向くんに似てるって言ったのか。

『悠亜、なんでここにいるの?高校、東京の方だったよね?』
「うん!京成だよ!音駒の監督に呼ばれたの」
『えっ.......』

ニッと笑った悠亜。
...まさか男子の合宿に着いてきたのかコイツは。

『男子に混ざってるの?』

まあこの野生少女なら不思議じゃないけど。
男女の差は基本的に総無視している節があるからこそ、そう違和感はない。

「試合は、ちょっとだけ混ざってるよ」
『普段の練習も?』
「普段は女子の方で練習してるよ?だけど今回は音駒の男子の監督においでって言われたの」
『...流石です』

今は夜だっていうのに、陽光が射してるみたいにコイツは眩しい。

『それで?わざわざここに来た理由は?』
「別に何か企んでるとかじゃないよー?わたしがそんな器用じゃないっていうのはよく知ってるでしょ」
『馬鹿だもんね』
「学力は柊華より上だもーん!」
『そういう問題じゃない』

こういう子供らしさみたいなものは、かつての仲間の中でも随一。
ちなみに柊華の学力は中の下とでも言っておこう。

「ナントカ運動公園ってとこの合宿所に泊まってて、烏野が近いって聞いたから来ちゃった」
『烏野総合運動公園ね。...ちょっと距離あるはずだけど』
「走ったらすぐだったよ!」
『夜道を1人で歩くのはやめなさい。悠亜はすぐに迷子になるんだから』
「いや〜、皆もついてくって言ってたんだけど、どうせすぐ試合するんだったら勿体ぶった方がいいかなって」
『はぁ.......』
「だから、ちょっと顔見に来ただけだよ。こないだも会ったけど、何か変わったかなーと思ってね」
『別に...。何も変わってないよ』
「外見はね。ま、真夜のことについてはそこまで心配じゃなかったんだけど」
『え、なにそれ』

思わず笑ったあたしを見上げていた悠亜は、不意にまるで試合の時のように真剣な表情を見せた。






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