スノードロップ
□触れた指先から
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IH予選・決勝当日。
この現場に同行するのは三度目だけど、やっぱり緊張する。
チームの皆はそれぞれ士気を高めて、いつも通りに集中してるから問題無いはずだ。でも選手以上に緊張するマネージャーってどうなんだ。
深呼吸をして、皆の後をついていこうと足を踏み出すと、頬に冷たいものが当てられた。
『若利?』
「顔色が悪い。...緊張してるのか?」
若利の声音から、若干の苛立ちが感じられた。
まずい、試合前に選手に迷惑掛けるとか何やってんだ私、最悪。
『...してないよ』
彼が差し出した清涼飲料水片手に謝ると、今度は眉を潜めた若利。
「何を考えているかは知らないが、お前の不安な気持ちが他の選手に伝わったらどうする」
『....ごめんなさい』
そりゃそうだ。
皆それなりに集中力が高くて、余計なことには目がいかないかもしれないけど、油断は禁物だし、余計な事はしてはいけない。
若利は小さく息を吐いたかと思えば、私の頬に手を当てた。
不覚にも、ときめいてしまった。
「俺達の練習を見ていて何を不安になることがある。お前が指導した事だって俺達の力になっている。だから負けることはない」
その真剣な瞳と視線がぶつかって、息を呑んだ。
『....うん、皆を信じてるよ』
若利の手に自分の手を重ねる。
大きくて骨ばった手に、精一杯のエールを込めて、笑顔を浮かべた。
若利の表情が幾分和らいだ。
「お前はいつも通り、見守っていろ」
その言葉に大きく頷き、コートへと歩き出す彼の横に並んで、中へと向かった。
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