スノードロップ
□揺れる瞳
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夏休みも終盤。
課題は数度に渡って行われた合宿の合間に済ませていたため、ラスト二週間の今は焦ることなくのんびりすることができている。
それは計画性のある若利も同じようで、いつも通り弛まぬ努力を続けている。
私にとっては灼熱地獄である体育館内で、自主練を行う若利は人間なのかと問いたい程だ。
『暑い....』
顳かみを流れた一筋の汗。
視界に映る若利はこれの何十倍もの汗を流していて、やはり男子って凄いと思うと同時に私はそろそろ枯れ果てるんじゃないだろうかと馬鹿な事を考えていると、時折眩暈がした。
『若利、もうすぐ十二時だよ』
「ああ...わかった」
動きを止め、時計を確認した若利はステージの方に置いていたタオルを取りにいく。
私は転がったボールを拾いに行くために歩き出した。
窓の外からは鬱陶しいくらいに蝉が鳴いていて、やはり真夏なのだと実感する。
[グラッ]
『ッ.....っ、』
ボールを抱えて立ち上がると、急に立ち上がった所為か視界が歪んだ。
眩暈の所為でぐにゃりと曲がった視界が、同時にじわじわと黒に染まる。
壁に寄りかかってゆっくり息を吐くと、チカチカと明滅していた視界が元に戻る。
深呼吸をすればそれが吹っ切れたように感じて、ボール拾いを再開した。
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