スノードロップ

あなただけの優しさ
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IHの宮城県予選の日程が粗方終了した今日。
様々なドラマに涙する観客の後方を通り過ぎながら、堅実な勝利を挙げた白鳥沢の皆と帰路に着く。
"選手"としてではない立場でいざ感じてみると、それまで当然だったことがそうではなくなることを、今更ながらに実感させられる。
もう何度目の試合かも忘れてしまったけれど、それは変わらない。


『明日は、決勝だね』
「ああ」


静かな部室のベンチに座り、隣に居る若利を見上げる。
相変わらず削がれる事のない士気を湛えているような真摯な瞳が、綺麗だと思った。


『緊張はしてないね、いつも通り』
「ああ」


相変わらずの仏頂面。
試合後とは思えないタフさが滲みでている。


『ねぇ、若利』
「何だ」
『.........』
「...どう、......っ」


不意を突いてみたくて、振り返った若利の頭を引き寄せた。
ごつ、と額を合わせて視線を合わせてみれば、一瞬遅れて距離の近さに気付いた若利の頬が朱に染まる。


『...かわいい』
「何がしたいんだ、お前は」
『何って......』


あ、笑ってる。口角が上がってる。
微笑み、というよりは苦笑だけど、それでも私からすれば若利の『笑み』なことに変わりはない。






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