スノードロップ
□誰も知らない愛を
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翌日。
部活に必要な用具の買い出しに行くために、郊外に出る。今日は部活も無いから、そこまで急がなくてもいいから少し気が楽だ。
いつものスポーツ店に足を踏み入れる。
テーピング用品とかをカゴに入れながらうろついていると、サポーターの場所に見知った顔が居た。
影山飛雄
古豪と呼ばれる烏野に入った一年で、天才セッターとしての才を奮っている。
この間の予選では、青城に惜敗していたみたいだけど。
声をかけるべきじゃないかな、と踵を返すと後ろから呼び止められた。
「...爽良さん、ですよね」
あ、バレた。
そう思った時にはもう遅い。
『....へえ、じゃあ今は猛特訓中なんだ』
「ハイ。それでサポーターが段々...」
『相当頑張ってるんだね、烏野も』
「爽良さんは白鳥沢のマネージャーでしたよね」
『そうだよ。もう三年目だけど、未だに皆の練習量に驚いてる』
「そうなんですか」
『うん、あー...でも烏野とも春高で当たるんだろうなぁ』
断言、とまではいかないけど...
この間の試合を見て、限りない可能性があったようにも見えたし。予選では負けてしまったけど、青城にも勝てそうな気がする。
「その、聞いちゃ悪いかもしれないんスけど、」
『うん?』
「爽良さんは、...もう、戻らないんですか?」
気不味そうに影山くんは私を見る。
頭が少し痛んだ気がしたけど、隠さずに言った。
『戻りたくても、戻れない.......かな』
「それっ「爽良、何をしている」....ッ」
『えっ、...!?』
突然上から降ってきた声。
慌てて振り返ると、そこには若利が立っていた。買い出しに行くとは言ったけど....。
心なしか、苛立っているように見える。
「買い出しが済んだのなら早く戻れ。戯言に乱されるな」
若利は影山くんを睨む。
慌ててその間に割り込んで牽制する。
『もう会計済ませて戻ろうとしてたの、ちょっと世間話してただけだよ』
完全な嘘だけど、若利は何も言わずに出口へと向かっていく。
『ごめんね影山くん。今のは気にしないで』
「あ、...はい」
鞄からメモ用紙を取り出して、急いで書いてちぎる。そのまま渡すと、影山くんは首を傾げた。
『私の連絡先。何かあったら、いつでも連絡していいから』
そのままカゴを抱えて、ダッシュでレジに向かった。
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