誠の武士とかつおぶし。~福猫見聞録~

□第四話
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変な猫がいる。

昨夜に脱走した新撰組≠フ羅刹隊士を始末し後片付けを監察方に任せ、その目撃者である男装の女の子も一緒に屯所へ帰るときについてきた猫。

僅かに感じる気配が気になって、最後に気配を感じた暗がりにカマをかけて声をかけたら出てきた小さい生き物。
猫だとは思わなかったなぁ。
あの視線は人のものみたいに感じたんだ。
本当に変な猫。
僕達の後ろをついてくるから土方さんが追い払おうとしたけど逃げないし。
猫相手に鬼の形相をしてしっしと怒鳴ってる土方さんは面白かったから僕は何もしなかったけど。
あの土方さんにそこまでされたら人でも逃げるよね。
どんなに捕まえようとしてもするりと逃げるくせに一定の距離を保ってついて来るから屯所に入ってくるし。
そのおかげで、土方さんにお前が声をかけたせいで飼い主と勘違いしたんじゃねぇのか〜なんて文句を言われてるけど、飼い主は僕じゃなくて男装してる子だよね。
だって、空いてる部屋にその子を放り込んだらぴったり傍についているし、
逃げない様に縄で体を縛る時なんてキツく結ぶ度に威嚇してきたしね。
これ以上に騒いだら斬っちゃおうかと思うぐらいには五月蝿かったかな。
それにしても、土方さんも一君も酷いなぁ。
二人して、猫が何かしら問題を起こしたら僕の責任だなんて言うんだから。
一君なんて本当は猫に触りたいくせに。

「総司。」

早速、本人がやって来た。

「どうしたの、一君。僕に何か用?」

「どうしたの、ではない。例の者の栓議があるだろう。」

彼の溜息と共に縁側から腰をあげ、広間に向かおうとしたが足を止める。

「あ、一君。猫にはもう触れた?」

あ、やっぱり動揺した。

「…俺は今、猫の話などしていないが?」

「僕は触ったよ?ふわふわしてたな〜。」

一君が言葉を返す前に広間に向かう。

「待て総司、だから俺は猫の事など…!」

「あははは、急がなくっちゃ。栓議なんでしょ?」

まぁ、一君の気持ちも分からなくはないかな。
結構きれいな猫だったしね。
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