【◆A】One more time!

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「おいっ!誰か早く救急車っ!」


ーームリだ、もう。


「っ……どうしてこんなことに」


ーーホント、そうだよな。


ーーごめん、みんな。



ーーああ、なんか懐かしい音が聞こえんな……。


ーーそうだ、あの音は。


ーー金属が球を打つ……。


ーーこれが走馬灯ってやつなのかな。


ーー……叶うなら最期に。


ーーもう一度あの人たちと野球がしたかったな。


ーーあの人たちと……





「っ……!!」


彼は思わず飛び起きて周りを見渡す。
ベッドがいくつか置かれた白い空間。
見慣れない空間に彼はさらに混乱した。


(ここどこだっ……!?)


ベッドから降りようとした彼は、頭に痛みが走りぐらついた身体を手をついて支えた。
側頭部に手を当てれば、そこには包帯が巻かれていた。
その感触を確かめていると、徐々にここへ来る前の景色が蘇ってきた。


青く点滅した歩行者信号機。
迫り来る軽トラック。
自分の名を呼ぶ声。


(あの後病院に運ばれたのか……)


ここが病院だと理解した時、ガラリと一つしかない出入り口の戸が開いた。


「……目を覚ましたのね」


戸を開けた本人は安堵の息を吐いてこちらへ向かってくる。


「若菜ちゃん、心配してたわよ。全く……あと少しずれていたら即死だったそうよ、悪運がいいというか。……どうしたの?」


まくし立てるように話していた彼女は、顔色が悪い彼の様子に気づいたらしく、彼の目を窺った。
自分とよく似た大きなつり目を見つめ、彼は口を開いた。



本来なら話すべきではない。
けれど、事故で混乱した己だけでは押しつぶされてしまいそうで。
彼は彼女に打ち明けた。





ーーあの人たちとあのグラウンドに立ちたかったなあ。






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