【◆A】One more time!

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(……やってしまった)


彼ー沢村栄純はユニフォームに着替えながら、先ほどの自分の行動を反省していた。


今日は青道高校見学の日で、新幹線と電車を乗り継いで西国分寺駅で野球部副部長である高島礼と合流し、栄純は青道高校を訪れていた。
懐かしい場所で懐かしい練習風景を眺めていた彼の耳に飛び込んできた怒号は、前回も聞いた東のものだった。


(東さんがただ仲間を貶してるだけじゃないってのは分かってたのにな。……いやでも、言い方ってもんがあるよな?)


頭では分かっていても、仲間というものを殊更大事にする気質である栄純は、彼の物言いに我慢できず飛び出してしまったのである。さすがに前回のように「メタボ先輩」とは言わなかったが。
その後は前回と同じ流れで、高島が提案した勝負に、御幸一也が乗り、彼は東と再び勝負することになったのだった。



懐かしいグラウンドの懐かしいマウンドに立つ。それだけで栄純は気分が高揚していくのを感じた。
周囲の視線は全てこちらを向いている。ぐるりと周りを見渡せば、いくつかの懐かしい顔を見つけた。


(リーダー、お兄さん、もっちー先輩……)


思わず駆け寄りたくなるが、今栄純と彼らは他人だ。
栄純は18.44m先にいるキャッチャーマスクをつけた御幸を見つめた。以前のあの11球が自分の運命を変えた。あのミットに投げ込んだ時の音は今でも忘れていない。
御幸がミットを構えた場所は以前と同じで、東の得意なコース。前回は思わず暴投にしてしまったが、今回はあのミットにしっかり投げ入れてみせる。そんな心持ちで、栄純は思いっきり腕を振り抜いた。



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