□記憶
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記憶?

記憶とは何ですか?

それはそんなにも大事なものですか?

なら、

それを持たない私は、

一体、何なのですか……――?




とある某ファミレス店。

そこには美味しそうにパフェを頬張る少女とそれを見つめる少年の姿があった。


「相変わらず、美味しそうだね」


蒼衣は楽しそうに言った。

この店には何度か来ている。

無論、目の前の彼女も飽きるほど来ているはずで、そのたびに食べているパフェも当然飽きていてもいいはずなのだが……。


「美味しいですよ。何度食べても感覚は初めて食べる時と同じですから」


嬉しそうに彼女は語るが、蒼衣としては少し可愛想な気もする。

目の前の彼女――、もとい、田上颯姫には、記憶が残らない。

それが彼女の持つ力の副作用。

不便だろうななどと蒼衣は思う。


「でも、私はきっと忘れてしまうんでしょうね……。このパフェの味も、ここでこうして蒼衣さんと過ごした時間さえも」


颯姫は寂しそうに言った。


「……大丈夫だよ」

「え?」

「大丈夫、僕がちゃんと覚えてるから」


そう、僕が覚えていれば、その記憶を君に与える事が出来るから――


「はいっ!」




記憶とは何ですか?

それはそんなにも大事なものですか?

でも、

それを持たない私は、

それでも幸せです……――



〜END〜
 

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