□優しい愛はいかがですか?
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部室の扉を開けると、中にいたのは空目ただ一人。

入ってきた俊也に声をかける事もなく、空目はただ、黙々と読書にふけっていた。

気付いていないわけではなさそうだ。

むしろ意図的に無視しているような、そんな感じだった。

無表情ではあったが、長年、友人として付き合っている俊也には分かる。

彼は今、怒っている。



「…どうしたんだ?」



空目は一度だけこちらに振り向き、また読書に戻ってしまった。


これは相当怒っているのかもしれない。



「…空目?」



隣に腰を下ろして再度声をかける。



「…さっき……」


小さく、空目は呟くように言った。


「ん?」

「呼び出されてたな?女子生徒に」

「は? ああ、それがどうかしたのか?」

「告白されたんだろう? …付き合うのか?」


目が点になった。

気に入らなそうな、尖った表情を浮かべる空目。

これはいわゆる、やきもちというやつなのだろうか。


「まさか。 俺はお前の方が好みだよ」

「なっ、お前、またそんな冗談を……っ!」

「冗談なんかじゃねぇって」


俊也の真剣な眼差しが空目を捉えた。


「お前が本気でいいってんなら、俺は本気になる」


空目は顔を少し赤らめて、うつむいた。


「……好きにしろ」


その真摯な、そして優しい瞳に、抗う術など、空目は知らない――……



〜END〜



空目さんはツンデレの申し子です(笑)
祐稀様、リクエストありがとうございました!
 

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