桜駅文庫(戯曲)

□ゆうびん診療所の開設届
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ゆうびん診療所の開設届
作者 中浜島 優

中島 龍医(りゅうい)
東京城北郵便局、郵便局員。元内科医
西原 優弥(ゆうや)
東京城北郵便局、郵便局員。龍医の友人。2年前に配達中に行方不明になった。元内科医。
神川 輝寿(てるひさ)
龍医の診療所開業を手伝うために来た、内科医。優弥にそっくりだが・・・。(優弥と輝寿は同一人物)
宮川 風花(ふうか)局長
東京城北郵便局、局長。
片岡 愛梨(あいり)
看護師。宮川局長の友人。「ゆうびん診療所」に勤めている。
上原 静夜(しずよ)
小児科医。龍医の先輩。
浜辺 桜(さくら)
「ゆうびん薬局」の薬剤師。

 場面)午前7時45分。郵便局の事務所。中央に机といすが置いてある。
 舞台上手より、通勤かばんを持った龍医登場。

龍医)おはようございます・・・あれ・・・まだ誰もいないのか。

 龍医、かばんを机の上に置き、自らも机の上に乗る。下手より宮川局長登場。

局長)あ、龍医者。おはよう。
龍医)局長っ(慌てて机から降りる)おはようございます。
局長)・・・(机を見る)そっか・・・
龍医)え?
局長)そこは確か優弥の席だったなって、思い出したんだよ。
龍医)あぁ・・・そうでしたね。優弥の席でした。あいつがいなくなってもう2年ですよ。早いですね。じゃあ、着替えてきます。
局長)今日は休みだよ。
龍医)え?じゃあ、何で呼んだんですか?
局長)見てもらいたい物があってね。
龍医)はぁ・・・。
局長)ちょっと待ってて。
龍医)はい。

 局長、龍医下手にはける。しばらくして、少し大きな段ボール箱を持ってくる。

局長)そのかばんどかせる?
龍医)はい。

 龍医、かばんを机から降ろす。局長、箱を机の上に乗せる。

局長)ふぅ、重たかった。見てもらいたいのはこれなんだけどね。
龍医)はい。
局長)昨日、龍医者が帰った後に届いたんだ。送り主が、ジョナサン・フィルン・・・外国人なんだけど、知ってる?
龍医)いや・・・知らないです。・・・あの、この箱の中、何が入ってるんですか?
局長)それを聞きたくて、龍医者を呼んだんだよ。
龍医)はぁ・・・。
局長)開けてみてよ。
龍医)はい。

 龍医、箱を開けて中を見る。

局長)何入ってる?
龍医)・・・医療かばんです。
局長)え?なんだって?医療かばん?
龍医)えぇ、それから・・・手紙です。
局長)なんて書いてある?
龍医)えーと・・・「Dear Dr.Nakajima、Nice to meet you・・・・・・」

 龍医、手紙を読んでいる。局長、不思議そうに箱の中身を見ている。

龍医)えぇ!?
局長)何!?いきなり大きい声出して・・・。
龍医)・・・優弥が・・・優弥が・・・
局長)優弥が?
龍医)生きてます!優弥が生きてるんです!!
局長)何だって!?・・・優弥は、2年前に配達中に事故にあって・・・
龍医)死んでなかったんですよ!よかった・・・優弥・・・。
局長)で、どこにいるの?今。
龍医)パディントンの診療所です。フィルン先生と、一緒に働いてるそうです。
局長)ぱ・・・パディントン?
龍医)イギリスですよ、イギリス。
局長)イギリス!?

 龍医、手紙を箱の脇に置き、医療かばんを取り出す。その時、底に手紙を発見する。
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