桜駅文庫(戯曲)

□欠落園〜鏡の間〜
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欠落園〜鏡の間〜
作者 中浜島 優

登場人物
菅原風樹
冬香未琴
杉原風医(ふうい)
早香梨琴(りこと)
舞歌
扇歌(せんか)
風樹の父・母・アナウンス

 舞台中央、長いすがおいてある。上手側に風樹が立っている。風樹にスポット

風樹)俺の名前は、菅原風樹。高校3年生。いわゆる受験生ってやつだ。・・・もう疲れたよ・・・。最近、模試の結果がよくない。第一志望の大学は、ことごとくC判定。俺としては最悪だ。今まで・・・最低でもBだった。・・・どうしたらいい・・・?俺は、どうしたらいいんだ・・・
未琴)風樹くん!

 未琴の声と同時に陽明。未琴、下手より登場。

風樹)みこ・・・
未琴)もぅ、3時間目の体育、どこにいたの?
風樹)・・・悪い・・・体調悪くて、保健室に
未琴)うそ!・・・どうせここにいたんでしょ。
風樹)・・・
未琴)最近どうしたの?元気ないみたい・・・
風樹)・・・(うつむき気味)
未琴)風樹くん・・・?
風樹)俺・・・いや、やっぱなんでもない。教室戻るから。

 風樹、下手にはける

未琴)どうしたんだろう・・・

 未琴、下手にはける。照明、薄暗く

扇歌)人間はみな、欠落している。
舞歌)何かが、慢性的に欠けている。

 舞台中央、扇歌と舞歌がベンチに座っている。

扇歌)舞歌、彼、何かをなくしかけてると思わない?
舞歌)そうだね。
扇歌)プライド?
舞歌)自信?
扇歌)信念?
舞歌)・・・さぁね。
扇歌)・・・呼び寄せてみようか?
舞歌)・・・必ず来るよ。

 下手より、未琴駆け込んでくる。手に紙を持っている。中央で止まる。陽明

未琴)どうしよう・・・風樹くんが・・・

 扇歌、舞歌同時に手をたたく。未琴ストップモーション。舞歌、未琴の手から紙を取る。

舞歌)ほら・・・やっぱり自分から来た。(扇歌に紙を手渡す)
扇歌)本当だ。
舞歌)歓迎の準備でもしようか。
扇歌)そうだね。

 舞歌、上手にはける。扇歌、紙を未琴の手に戻してから上手にはける。未琴、我に返る。

未琴)はっ!・・・私・・・あ、そうだ、急がなきゃ!

 未琴、上手に駆け込む。暗転。

アナ)みどり野線は、現在、16時に発生した人身事故のため、運転を見合わせております。・・・
母)風樹!しっかりしなさい!!
父)大丈夫か、風樹!

 救急車のサイレンの音。(大→小)下手側にスポット。風樹が立っている。

風樹)俺は、もぅ耐えられなかった。これしか、方法は見つからなかった。・・・ごめんな、みこ。俺・・・やってらんない・・・お前だけでも・・・頑張れよ・・・
扇歌)ようこそ、菅原風樹様。

 照明薄明るくなる。上手側に扇歌と舞歌が立っている。

風樹)どちら様ですか・・・・?
扇歌)私の名前は、扇歌と申します。こちらは舞歌です。
舞歌)舞歌です。はじめまして。
風樹)はじめまして・・・
扇歌)本日は欠落園に来ていただきまして、ありがとうございます。
風樹)欠落園・・・?
舞歌)はい。その名の通り、何かが欠落した人間に、その、何か、を探していただくためにあるのです。
扇歌)人間はみな、欠落している。
舞歌)何かが、慢性的に欠けている。
扇歌)あなた様がここでそれを見つけることができれば、
舞歌)あなた様は、再び生を受けられる。
扇歌)あなた様が今まで何を大事にして生きてこられたのか、
舞歌)ここで・・・そのものへの想いを
扇歌)確かめてさしあげましょう。
風樹)・・・どうすれば、いいんですか・・・
舞歌)簡単ですよ。
扇歌)何か、を探してください。他にも探している人はたくさんいらっしゃいます。彼らと、お話しなさっても結構ですよ。

 扇歌上手に、舞歌下手にはける。
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