桜駅文庫(小説)

□約束の場所、君に会いに
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1、雨降りの中の別れ


あれは……雨降りの日だった。
急患が来て、その処置をしていた。
どうして…
どうしてあの時、俺は

美薫のそばにいられなかったんだ。


「ごめんね…………るぅくん…………」


瑠樹が病室に着いたとき、美薫は、息を引き取る瞬間だった。
瑠樹の姿を認めた美薫は最期の力を振り絞って言った、最期の言葉だった。





瑠樹の恋人、美薫と出会ったのは、5年前のことだった。
当時ふたりは同じ病院で働いていて、同じ患者を担当したのをきっかけに仲良くなり、恋人にまで発展した。
そんなふたりに、悪夢が襲ったのは、3年前だ。
―美薫が体調不良を訴えた。それから、美薫は入退院を繰り返した。

「今度発作が出たら、私、もう病院から出られないって…。るぅくん、どうしよう…」

退院直後の美薫はいつも不安そうにしていた。
そしてついに、入院。二度と病院から出られなくなった………。


「美薫………美薫がいなくなったら、俺はどう生きたらいいんだ…」

未だに、雨降りの日は嫌いだ。美薫の顔を思い出す。最期の顔と言葉が、俺の心を締め付ける。

仕事に身が入らない…。

いつしか俺は、辞表とにらめっこする日々が続いていた。
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