Jewel box
□甘い罠
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甘い罠
最近、ミランダをお茶に誘っても三回に一回しか来なくなった。
前なら誘えば必ず来てくれたのに…なんだか寂しい。
クロウリーは嫌われてしまったのではないかと不安に思いながらも、また誘う。
けれど今夜もまた、ミランダは微妙な笑顔で首を振るのだった。
「人気のチョコレートショップの新作がでたのだが」
「す、すみません。あの…こ、今夜はリナリーちゃんと約束があって」
もちろんそんな約束は嘘だとクロウリーも気づいていたが、ミランダが来たくないなら仕方ない。
寂しくてしかたないけれど、我慢しなければ。
クロウリーはミランダの嘘にこれっぽっちも気づいていない振りをすると、笑顔でミランダの頭を撫でる。
「それは残念である。ではまた暇な時にお茶に付き合ってもらえるだろうか?」
穏やかなものいいに、ミランダは安堵したように頷いた。
「はい、じゃあ…また今度」
その日は、それで別れた。
けれどしばらくしてもミランダがクロウリーの部屋を訪ねることはなく、むしろクロウリーと会うのを避けるようにミランダは教団内を歩きまわっていた。
いることが多かった書室にミランダが来ることも無くなり、食堂へ来る回数も心なしか減った気がする。
ミランダの部屋には自炊道具があるからちゃんと食べてはいるだろうが、それもまた寄生型で大食漢のクロウリーを避けての行動にしか見えなかった。
そんな行動が目立ち始めて一週間がたち、流石に周りも気になってくる。
もともとクロウリー養護派のラビは落ち込みを隠せないクロウリーを本気で心配し、アレンはアレンでミランダを心配した。
二人が喧嘩をしているという噂は聞いたことがないし、クロウリーの落ち込みようから見ても喧嘩というわけでは無いだろう。
ため息をつきながらフラフラ任務に赴くクロウリーを見送った二人は、何故クロウリーを避けるのかミランダに確かめに向かった。