Jewel box
□甘い罠
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しばらく広い教団内を探して回った二人は、教団の中央の螺旋階段にてミランダの姿を見つけた。
わざわざ階段を使わなくても科学班開発のエレベーターがあるのに、汗だくだ。
アレンとラビはちょっと首を傾げながらもミランダに声を掛けようとし…あれ?と声をあげる。
こっちに上がってきていたミランダが踵を返し、階段を降りて行くではないか。
「ミランダさん!」
「うぉーい、ミランダー!」
声を掛けるも、ミランダは険しい表情のまま階段を降りていった。
それがあってから、二人は度々ミランダが険しい表情で階段を上り降りしている姿を見掛けた。
危機せまった様子のそれに二人は声を掛けるのを諦め…
ふと、気づく。
「リナリー、今回何も言ってきませんよね?」
「もしかしてさぁ…アレか?ミランダってば…」
「………黙っておきましょう。クロウリーさんもそのうち分かります……よね?」
「アレン、クロちゃんの鈍感さを舐めちゃ困るさ。無理に決まってるっしょ」
そうですね…と、アレンとラビは苦笑した。
クロウリーは任務から帰ってくる時に、必ず自分に甘いお菓子をおみやげに買ってくる。
お茶をする時、必ず甘いお菓子を添えてくれる。
生クリームのかかったシフォンケーキは何より好きなお茶うけだけど…毎日食べていると、女の子には辛い現実が待っていて。
「クロウリーさんが任務から帰ってくるまでに…あと一キロ痩せなくちゃ…!」
外になかなか出られないから階段を上り降りして、食事はジェリーちゃんから低カロリーメニューを教えてもらって自炊する。
リナリーには新陳代謝を良くする漢方茶を譲ってもらった。
ここ数ヵ月で増えた体重をなんとかして戻さなくては。
またクロウリーとお茶ができるように。
餌付けされているのはわかっているから、それに騙されるためにも…
「あと一キロ……!!」
汗だくになって頑張るミランダの姿が、あと数日教団内で見られたという。