Story]

□ぎぶみーちょっこれーと!
1ページ/1ページ


珍しく会話の弾まない午後三時、来たるイベントに向けて厨房からは甘い匂いが漂う。その匂いに触発されてか、真剣な瞳で宙を睨んで、ラビがぼそりと呟いた。
「チョコレート」
それを向かいで聞いていた、聞いた筈のラビの可愛い可愛い恋人は。
「……」
至って無表情にもきゅもきゅと口を動かし続けていた。
「……」
あれ?と、ラビはもう一度、今度は視線を搦めとる様にして言葉を放つ。
「チョコレートが食べたい」
「今年はチョコレート用意してないであるよー」
クロウリーの言葉に即座にラビが嘘!?と叫びクロウリーがのほほんとホントであるーと返した。被るようにして神よー!!!!などという悲鳴が上がるが全くもって気にした風もなくクロウリーは二人で摘んでいたポテトを空にする。
「ご馳走様!」
「えっ、ちょっ何でないんさチョコレート欲しいさ今からでもいいから作ろ!?作ろっ!!!」
「あははは嫌であるー」
かぶりつくラビを余所に、クロウリーがにこりと笑って席を立つ。置き土産のように背中から発せられた台詞に、ラビはうわぁんとボロリ涙を流しはじめるのだった。

「……で」
あんな風になってるんですか?と、アレンが部屋の隅を顎でしゃくった。
明るい筈の談話室がその一帯だけ湿り気を帯びている。暗く重い空気の真ん中にましますのは、我らのムードメーカー。
「ラビ」
アレンがソファーから振り向いて呼んでみた。返事無し。食べ終わったチョコの包み紙を投げてみる。反応ゼロ。あっクロウリーと叫んでみれば顔を上げて慌てるが、嘘ですよバーカと言うとシクシクと顔を膝に埋めて泣き始める。
「……鬱陶しいですねー」
一通り遊び終わって、アレンは紅茶を一口啜り、どうでもよさそうにそう述べた。
机の上の菓子をあらかた食い尽くした今、彼にとってここに居続ける意味はない。
しかしながら目の前にいる人物のおかげで、からかって帰るだけとはいかないようだ。
「まぁまぁ、そんなこと言わずにどうにかしてよ。部屋からも追い出されたらしくてさ」
そう言いながらヘラリと笑い、コムイはここでサボろうと思ったら彼が邪魔でねーと続けた。
「酷っ」
「酷くないよ、僕だってラビのことを心配してー」
「研究室とかでサボればいいじゃないですか」
「他の所はリーバー君の手のものが待ち伏せてるんだよね」
「やっぱり酷い」
アレンの言葉にコムイがにこやかに笑う。その笑顔に悪びれた様子は一ミリもない。そして、その口が呪文を唱えた。
「ジェリぽんにみたらし団子頼んでるんだけどな★」
「さぁラビさっさとお家に帰って下さいゴーホームゴーホームハウスハウス帰れむしろ還れヘブンもといヘル」
「ああぁあぁああぁああぁぁクロちゃあぁぁああぁあぁ!!!!!」
ガスガスガス、と脇腹を狙った強烈な蹴りを浴びながらラビが叫ぶ。だがしかしその声に応えるものは誰もいない。なぜならば呼ばれた当のスイートハニーは。


「あらクロウリー上手!」
「そうであるか?」
「ええ凄いわ、ちゃんと膨らんでるじゃない!シュー生地って難しいのよー?」
「ふふ……あ、愛が詰まっているであるから……」
「あらやだ惚気!?んっもう妬けるわね〜」
「あ、クリームはどうであるか?」
「大丈夫、美味しかったわよん♪さてアタシはコムたんに頼まれ事があったんだわ。出前してこなきゃ」
「いってらっしゃいであるー」
「クリームはあんまり詰めすぎないようにね〜」


……厨房で製菓を嗜んでいたもので。

「あぁあぁあああぁあぁチョコレートほしいさぁあぁあぁあチョコレート食べたいさああああクロちゃあぁぁああぁああああぁぁあドゥフっ止めて止めて背骨と下腹部は止めてボヒァ内臓はアウトだからダメだからうわぁぁあぁあちょっらめーックロちゃん助けっ助けてさぁああぁぁあぁああぁあぁ………………!!!!!」


fin


後書き

見事に投げやり\(^q^)/
やる気なさすぎ笑……えないorz


write2010/2/13
up2010/2/14

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ