Other's storyU

□ヒトヤリ
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ぷりーず、るっくみー、あんど。



《ヒトヤリ》



「おやおや、家出の相談かね?」
バッ、と私の目の前でだらしなく雑談していた白い髪が、振り乱れるほどの勢いで後ろを向く。
そしてまた、声の人物を確認すると、その銀灰の瞳は不快感を滲ませて僅かに歪み、張りの無い声でぼそぼそと、僕に何の用ですか?とその人へ投げられた。
は、と鼻に抜ける短い笑い声が私の耳を打つ。
「いいえ?通り掛かっただけですよ。
それとも何かな、君はそんなに私と話をしたかったと。アレン・ウォーカー」
にっこり笑って、やや遠めの位置を保ったまま低く優しい声がウォーカーの名前を呼ぶ。
ウォーカーがぞっとした様に肩を寄せた。鳥肌を起てたらしいあからさまなアピールだ。しかしそれを知らん振りして、笑みを湛えたままその人はそこに立っている。
「……」
沈黙が暫し辺りに降りた。向かいに座っている他のエクソシスト二人も、それぞれ若干眉を歪めて事を見守っている。
どこか緊迫した沈黙に終止符を打ったのは、ウォーカーの低く揺れる声だった。
「そんな訳無いでしょう。貴方と話したいことなんてありません。
……他に用があるなら先を急いだらどうですか」
ウォーカーの目が、その人の静かで深い瞳を睨んでいた。
「おや、つれない。ご機嫌を損ねてしまったようだ」
にっこり、笑い直して投げられた冗談にも、ウォーカーの表情は変わらない。
その人はやれやれといった茶目っ気を含んだ表情を作り小さく首を振ると、それでは、と踵を返した。
と、そのまま離れていくのかと思うと、不意に上半身だけをこちらに向け、今度は含みのある微笑を浮かべて口を開く。
「先程は用が無いように言いましたが……私の方から話が出来たので、また後ほど」
瞬間、ウォーカーが目を見開く。その人はそれをしっかりと見届けて、満足したようにもう二度と振り返らず真っ直ぐに歩き出した。
終始、私の事などは一瞥もしないままに。
「はぁ」
遠ざかる背中を確認して、大袈裟に溜息を吐いたウォーカーに、目の前のブックマンJr.が苦笑してドンマイと声をかけた。
「呼び出しかー」
「うわー……面倒臭いなぁ」
「でもほらお菓子貰えるかもしんないさ!」
「いや、それを上回って遠慮したいです」
先程までの緊迫感を掻き消すように、くだらない話に立ち戻る。主題はすぐに移り変わり、「再会」の事はたちまちに忘れられる。
八日と十八時間ぶりだというのに。
私は胸のうちだけで高ぶりを堪えつつ、今日こそは二十二日と五時間振りに、その怜悧な麗しい視線を頂けるだろうかと、浅ましい望みを巡らせていた。

fin


後書き

とりあえず変態じゃないのに挑戦!
そして失敗★
リンク目線……長官描写に走りそうになる……!てめぇリンク黙れ……長官見過ぎなんだよてめぇ……!長官描写しねぇのがオチを踏まえてミソなのに困る!
リンクほんと変態過ぎる。


write2010/4/11
up2010/4/13

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