Other's storyU

□蔑
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(何て醜いのか)
下種びたニヤニヤ笑いを浮かべ、部下を言葉の裏で罵るその人、その横で、私は表情を変えないように考える。脂肪を蓄え、衰えたその肢体は、それでも誰に害されるでもなくのうのうと不愉快な声を撒き散らす。
(非力な豚)
上座に、上等な椅子に、さも当然のように腰掛けて。ただ意味もない血統に従いそこに居るだけの存在が、べとついた言葉で議を占める。一瞥で、居並ぶ顔触れが緊張と不快にざわついているのがわかる。その多くは私と同じく、この壮年のガラクタに嫌悪を覚えているのだろう。
一言三言の報告に、要らぬ返しを長々と返して、ニヤニヤと困る報告者をねめつける。馬鹿らしいこの会議が定例だということが、私にはまた腹立たしい。
この人は、ここまで醜く歳を重ねても尚、まるで幼児のような脳しか持たないのだと、その白髪もいくらか見える後頭部を蔑視する。
(ああ、下らない、下らない、下らない)
私は冗長なやりとりを聞き流しながら、自分の職務のなんと馬鹿げたことかを再認識する。
こんな男を、護ることにどんな意義があるのか。
不必要で傲慢な、この存在。
醜く幼稚な、この生き物。

「さて、では次は君の番としようかね」

そのいやらしい声と、てらりと光る笑わない目が私を向いた。
(ああ)
ぞくりと背筋が粟立った。
その醜いものから、幼稚なものから、非力なものから、私は酷く無関心に見られていた。
その命を護るものとでも、その威厳を印象づけるものとでもない。
ただ、ただ弄び、引き回し、壊すべき、壊れるべき玩具として。

「報告したまえ」

彼が微笑み、私を見る。
私は彼を蔑みながら、慇懃に口を開く。
ああ。
私は彼の玩具の一つだ。
彼は私をいつか打ち捨て笑うだろう。
私は彼にとって、取るに足らない存在だ。
彼は私が必要ではない。
私が彼を蔑もうと。
下らない彼は。

私の。

私を。


私、は。

fin


後書き

蔑むことでさらに自分を下位に置く。
そんなドMはリンクです。
しかし適当。


write2011/4/5
up2011/4/6

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