Story11

□塗慕
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爪弾いて蜜に濡れた。

   《塗慕》

一掬いした汁を投げつけて、まみれた胸に頬擦りをした。どうしようもない感情を押し潰すようにあなたに馬乗る。
白い肌、どこまでも白い肌。それに白を上掛けして、僕はあなたを汚した気になる。
でもそれは気のせいで、すべて僕の気のせいで。
もし僕がピエロならきっと喝采を得られるでしょう。なんて、あなたの腕を縛る僕の無駄な力は、あなたが僕に力を使わないように、僕なりの「普通のフリ」の一環でしかない。それもこれももう全部無駄になったけれど。
うん、僕の下で、気丈に、僕を見上げる、瞳。
「……クロウリー」
その瞳がほしかった。優しい瞳がほしかった。どうしようもなく、僕のこの手に染み付いた泥のように、どうしようもなく変わらなかった。
「クロウリー」
諦めようと、何度図ったか。それでも拭いきれなかった想い、貴方を縛る想い。
「クロウ、リー」
返事はなかった。その口はがんじがらめに僕の想いの丈で縛られていた。
「……苦しく、ないですよねぇ」
だってそれは僕の重い鎖だから。だってそれは僕が秘めた秘めてきた秘めきれなかった思い入れだから。
息なんて出来ないくらい、僕はあなたがすき。お揃い。ちぐはぐに同様。
ああ、僕の下の白いからだは、ぬめる汁とひび割れた残滓でまるでキャンバス。
どこまでも白く白い白のキャンバス。
絵の具の進攻を許さない白の。
誰の意思も乗せさせない、白の。
お揃いのはずのレッテルは一体どこにしまい込んだんですか?ねえ、その綺麗なハート型はどうやって作ればいいですか。
この仕様のない赤を、ぶちまけてしまいたい。
撫でてなぞって吐いた嘘を数えて、この腕の先、あなたとは交わることのない小指をその先の糸をへし折って、引き千切る。
今度は絶対の約束しましょう、嘘を吐かないよう一つ一つピンで吊るし上げながら、あなたに永遠誓いましょう。
そうしてようやく零せる赤を僕の煮詰まった熱だらけの声をその耳に挿入させて下さい。
ああ。上手く甘く、果てしなく醜悪にも繋がれたなら、僕は似非っぽい笑顔であなたに跪き、僕の運命の人、と笑います。偽物の王冠が、あなたには本物に見えるなら。
「あ、」
異していますと告げなければなりませんか。
僕の泥だらけの抱擁では伝わりませんか。
力一杯の拘束では足りませんか。
息を奪うほどの行動では分かりませんか。
投げ付けた言葉では通じませんか。
この赤い腕であなたの白い体を汚したら、僕の青い想いは届くでしょうか。
優しい目が僕を見つめつづけ、時を停めた瞳が僕を写しつづけ、そんな冷たい未来は僕の真っ赤な腕の中。
泥まみれ、赤い赤い汁まみれ、くずみたいなこの生命に、純白のあなたの存在を下さい。
甘い甘いチョコレートは要りません。
苦く痛い、それでも誰よりも何よりも確実に間違いない、僕だけの、僕用の、僕のための。
あなたの瞳がほしい。
あなた自身がほしい。

さああなたの罪は白々しいたっぷりの罪は僕に任せて、ただあなたは僕を泥まみれの嘘まみれの熱まみれの血まみれ血まみれ血まみれのグチャグチャな僕を白濁した瞳で射殺して下さい。

fin


後書き

言葉遊びラブ!
中二病アレンです。
罪のない人間などいないから、心に隠さない人間などいないから、でもそれさえ分かりたくないくらい、パンパンになっている想いがあったんです。


write2011/2/13
up2011/2/14

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