Story U

□アノ蝶ノ夢ヲ。
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「あ、僕も手伝いますよ」
「有難う」
私は中庭へとティーポットを運ぶ。隣では、アレンがお菓子の盛られた皿をニコニコ見ながら運んでいる。
「クーロちゃーん!アレーン!」
中庭の木で、リナリー嬢やミランダと喋っていたラビが、私達に気付いて手を振る。
その木の上の方で、新聞を読むブックマンも見えた。
「お茶にするである」
庭のテーブルにティーポットやカップを並べる。今日は良い天気だから、空下でティータイムが良い。
アレンは早速一つお菓子を頬張る。ラビ、リナリー嬢、ミランダも寄って来た。
「やだ、私ったらお手伝いもしないでっ。ごめんなさい、手伝いますね」
ミランダが慌ててカップを取ろうとして、取り落とす。
「よっ」
カップは地面に着く前に、ラビの手で受け止められた。
「ご、ごめんなさい…!」
ミランダが慌てるのを見て、いつの間に降りて来たのかブックマンが「気になさるな」と返す。
「そ、割れてねェし、平気さ。お茶にしようぜ」
「今日はカモミールティーを作ってみたである」
皆が笑っていた。ミランダも漸くその顔にはにかむような笑顔を見せ、席に着く。
全員でテーブルを囲んで、お喋りをしながらティータイムを楽しむ。
誰、一人として欠けることなく。
青空の下、全員で――――――――

「よう、起きた?」
目を開くと、ニィと笑う男がいた。
隣には、男と同じように黒髪に浅黒い肌の少女が立っている。
「よく寝れンねー、敵の前で」
男はケラケラと笑うと、私をねめつける様な目で見る。
「ティッキー、それどーすんのォ?」
少女は飴を舐めながら言う。
「どうしようかと思ってね。ま、いずれは殺すけど」
男は楽しそうに言う。
少女はどうでも良さげにふーんと呟いた。
「……」
口を開くが、声が出てこない。
何を言えば良いのかも、わからない。
「まぁ、千年公もシナリオ通りになって機嫌良いしな。
当分ダンナで遊べるだろ」
「じゃあ当分の間は僕が使お」
「はっ?!」
「飽きたら貸したげる」
「いやいや、コレはオレのだって」
「ティッキーのくせに生意気ィイ〜」
あぁ、どうしてまだ生きているのだろう。
「壊しちゃうよ?」
少女が笑う。
「…仕方ねェな…返せよ?」
男が私をちらりと見る。
――冷たい目だ。
玩具(オモチャ)を見る目。
感情の薄い目。

アァ。  ドウシテ生キ延ビテシマッタノダロウ。

私はもう一度目を閉じた。

fin


後書き

教団が負けたという設定で、アレン→ハートで倒された後。
イノセンスの無いクロちゃんは只の人。
拾って来たのはティキです。
クロちゃんは気付いてないけれどもティキはクロちゃんがお気に入りかと。
ロードはアレンが居なくなったのでティキの玩具を奪いたいんだな。うん。
温いわぁ…。


write2006秋〜冬
up2007/3/19

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