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□疾く、放つ
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嘘だと思うなら触れてみれば良い。


ほら、もうドロドロであろう?


  《疾く放つ》


其れは未だ ゝ 狭き日ノ本
遠き昔に御座居ます
絢爛豪華な花籠燈(ひ)籠
弌人の御人が居りました

日々御座します方々の
一夜の言葉を喰らひては
精衣も鐚も剥ぎ取りて
女蜘蛛と呼ばれし御人です

そして今宵も蜘蛛の糸

惑うた蝶が掛かります


(蝶と蜘蛛との騙し合ひ)

(其の目で篤とご覧有れ)


さぁ 今日も

嘘を吐こうか

最大級で上質な

「愛してるさ」

嘘を吐こうか

限り無く真実に近い

「ダンナを放さない」

嘘を吐こうか

何時もより稚拙な

「僕が助けてあげます」

嘘を吐こうか

猛毒の人工的な

「少しだけ待っててくれるかい」

嘘を吐こうか

直ぐに破れる

約束の顔をして


(如何でしたか?)

(手練れの言は)


嘘を吐こうか

全てを理解した上で


「信じて いるである」

「必ず 迎えに 来ると」

「何時までも 待っている」

「私は 此処で 貴方の事を」


疾く

此の身滅ばん事を

精に

嘘に塗れながら

幾度でも貴方達の言葉に縋る

愚かな此の身が滅ばん事を


(有明の巣に)

(露が光って居りました)


「太夫」

「分かって いるである」

「御召し物を」

「分かって いたである」

太夫、と潮垂れし者の背後拠り声が掛かりまするが
当人決して見返りなさる事無くして
終い迄了ふ事無き人情喜劇の
涙ゝの終劇と致したく存じます


「信り等 只の絵空事である」

fin


後書き

…わ、分かりますかね?あれです、花魁クロウリーです。
ほら、エイプリルフールですしね、売春禁止法施行かなんかの日ですから。

客に毎夜毎夜唱えられる繰り言を、何度裏切られ破られても何処か信じずにはいられない、信じたい。

身請け以外で門をくぐることが許されない『もの』だからこそ、可能性、愛、儚いもの美しいものを知り纏い成り上がれるのかな、とか。

ああ未消化!!


write2007/4/1
up2007/4/1

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