StoryV

□クラディウス
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《クラディウス》


「そろそろ、であるな」


「そうですね」
「もう皆用意も出来ただろう」
「ケーキ、楽しみですねぇ」
「こらこら、内緒の筈なのだから言ってはダメであるよ」
「でも、あれだけ派手に準備をしていれば誰だって気付きますよ」
「それは言ってやるな、皆の厚意であるのだから」

「………」

「………」

「……長、かったな」
「はい」
「まさかこんな風に幸福な日が来るとは思わなかったが」
「はい」
「あそこで見つかった時は終わりだと思ったである」
「僕も正直焦りましたよ」
「まるでそうは見えなかった。
……あの時も思ったが、私がゲイだと知っていたか?」
「いえ。…先生の中に一人、たいした遊び人がいるのは噂でありましたけど」
「まさか、私だとは?」
「皆知らなかったでしょうね」
「なら良い。
やれやれ…。今となっては、笑い話だが…。
…昔は、互いにやんちゃをしたな」
「はは…はい」
「……アレンとあそこで出会わなかったら、私は今頃どうしていたであろうな」
「ははは、大丈夫。
クロウリーでしたら、僕でなくともいい人を見付けていましたよ」
「それは暗に自分を褒めているのであるか?」
「まさか…とんでもない。
……僕だって…あなたと出会わなければ、今頃何処かで、のたれ死んでいました」
「ふ……そうか」
「ええ、そうです」

「………」

「………」

「そういえば、あの日、何故あのバーに?
いつもは違うところでやっていたのだろう」
「ああ、…あの日は、偶然友達に誘われたんです。
良いバーがあるから、と。」
「ふむ、…ああ、あの時一緒にいた彼か。
では、彼が私たちのキューピットだな」
「止めてくださいよ。…あいつは酷い奴だったじゃないですか」
「そうであるか?なかなかの好青年だっただろう。他の人達にもモテていた」
「クロウリィ……。
…僕は、彼が嫌いです」
「…私を犯したから、か?」
「!、クロウリー!」
「……フフ」
「……どうして笑ってるんですか…もう…」
「ふはは…済まない済まない。
しかしな?アレン。あのバーは発展場だったし、」
「私はあの時フリーセックス主義者だったから仕方ない、でしょう。
聞き飽きました。
…甘過ぎます、そんな考え方」
「はは…」
「ま、良いです。
……だって今貴方は、僕の隣にいる」
「………ふ。あの時だってアレンは、彼を殴って無理矢理私を抱き寄せたではないか。
おかげで、せっかくキメていた薬が醒めて酷く痛いわ、恥ずかしいわで」
「ええ?傲岸不遜、快楽至上主義で高名な“Night King”が何を言ってるんですか、クロウリー先生」
「昔の通り名を呼ぶな、“Bed Queen”のウォーカー君」
「クロウリーこそ。
僕だって、今はすっかり大人しくなったじゃないですか。
でもまぁ…あなたとこうしていられることになりましたから、あの人も許してあげても良いかと思います」
「それは良かった、もう招待状を出しておいたのである。
先程覗いたらちゃんと来ていた」
「!そうなんですか?
……凄い、久しぶりだ」
「実はな、私は珠に連絡を取っていた。
アレンが心配らしくてな。メールが来るんだ。大丈夫か、アレンはどうしている、と」
「………。
クロウリーと出会ったあの日以来、ですから、十年振り、ですか?」
「であるな」
「僕も変わりましたからね。また、親しく出来るかどうか」
「私も…良いおじさんであるからなぁ。
ふふ…幻滅されはしないかと心配だ」
「又、思ってもない癖に。
変わりましたね、本当」
「ふてぶてしくなった、か?」
「可愛くなりました」
「アレンも、いい男になったであるよ」
「知ってます」
「それは済まなかったな」
「はい」
「…愛している」
「僕もです」

「「……‥‥・・・・ ・ ・ ・」」
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