Other's story

□おまえ
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勝手な女だとは知っていた。
自分に擦り寄り始めたあの時も、酷く脈絡を欠いていたからだ。
だから、こんな終わり方になるだろうことも知っていた。

…………

最近姿を見せなくなったあいつが今どこにいるのか考えるようになって、暫くが経つ。
自分から会いに行く気は更々無い。故に、思考だけが先立って加速していく。
あいつの強さだ、死んではいないだろう。
状況など意にも留めない性格だから何かに困っているとも思えない。
だとしたら。
…俺はどうしようもない戯れ事を続けている気がした。
簡単な事だ。
あいつは来ない。
俺は行かねェ。
それだけの事だと、思うことにした。



俺の前に現れたのは、奴の友達だった。
俺が蕎麦を食い終わるまでをたっぷりと眺め、下らない世間話を一方的に口にする。
それだけという事実が、俺に偽りない真実を告げた。
「…あいつは、今何て野郎の所に居る?」
向かいに座るそいつに聞けば、曖昧な笑いが返ってくる。

――――こんな終わり方になるだろうことは知っていた。
なぜなら、あいつは酷く勝手な女だったからだ。
俺を好きだと言い、俺の傍をうろつき、俺の全てを欲しがった。

俺は席を立った。
奴の友達は動かない。
俺は、その足で自分の部屋へ向かった。



殺風景だった部屋は、どことなく優しくなり俺を迎えた。
ドアの側に立ったままそれに眉をしかめる。
奴の居た部屋。
奴を抱いた部屋。
奴が暮らした部屋――――――――
いつからだ。
いつから俺の部屋は俺のモノで無くなった。

思い出せない位に、奴がそこに在った。

…………

勝手な女だとは知っていた。
自分に擦り寄って来た時も、あいつは無邪気に笑っていた。
だから、踏み入れさせてはいけないと思った。
ほら、結局奴は全てを欲しがって全てを手に入れて、そして全てを捨てて行った。
俺に残されたものは何も無い。
奴を欲しがっていれば違ったか。
きっと、もっと早く終わっただけだ。
あんな我が儘な女は他に知らない。
あれ以上自分勝手な女は居ないだろう。
少なくとも、俺は。
もう、これから先であいつより酷い女なんかと出会うことは無い―――――

fin


後書き

…超私信な小説ですが。

僕は別に神田が好きではないが、「彼女」の態度には酷く嫌悪感を覚えるよ。
理解できないから「彼女」と話す言葉も持たない。
人とは簡単に切り捨てていいものでは無い。
大事にされたい等とほざくなら、こんな最低な行為をするな。
少なくとも、僕は「彼女」に幻滅した。

…見ているのかな?
飽き性の、彼女、さん。


write2007/11/29
up2007/11/29

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