Other's story
□入道雲と君。
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土砂降りの後の夏空。
虹は見えなかったけど、それでも普通に幸せで。
《入道雲と君。》
「あっついさぁ」
「うるせぇ。黙れ。」
突き付けた竹刀に動じることは無かった。
「なー、ユウー、涼みに行こうぜー」
ひょいと脇をくぐり抜け、前に立つ。
「うぜぇ」
「デパートとかー、コンビニとかー、」
「一人で行け」
竹刀をしまい、また問題に向き直る。
何だこの記号?
∫…?
くそ、意味がわからねぇ。
ちっと舌打ちが響いた。
ちっとも動かないシャープペンシルは、細い指の間で滲んだ汗を吸い取る。
「あ、図書館、図書館行くさー」
無視。
「ユウー、ユウー?ユー〜ウー〜〜〜」
「名前で呼ぶんじゃねぇ」
ジィジィと蝉が騒ぐ。
暫く、教室内は静かになった。
ぱ、
汗で滑る手からシャープペンシルが奪われた。
かりかりっと広げられたノートに何事かが書き込まれる。
「できた」
m=1、そう出た答えは、シャーペンを放り投げた手で隠れる。
「ってめ…!」
「あーつー―――。ユウ、早く行くさ図書館ー」
そろそろあの本、続き出てっかなー、でも遅筆だからなー。
一人ごちつつ、鞄を二つ持った背中がドアに近づく。
机の上に転がったシャープペンシルを胸ポケットに仕舞い、もう一人が立ち上がった。
眉間のシワは、暑さのせいか。
「何時もンとこでアイス買ってくさー」
「黄粉」
「え、俺が奢んの!?」
暑苦しい頭が二つ、並んで歩いていく。
「数2」
「ん、おっけ。教えてあ・げ・る」
ぱしん、と赤毛を白い手が殴る。
陽炎に魘されそうなアスファルト。
「…あちぃな」
「あっちィさー」
汗ばんだ手と手。
上の上には、虹どころか圧巻されるほどの雲が立っている。
「てー、つなぐー?」
「しね」
それとなく、汗ばむ頬は赤く上気した。
fin
後書き
うわ楽しいー。
緩いー。
なんだこれ、キャラメー?(笑…えない)
write2007/7/2
up2007/7/4