Other's story

□Carameriser
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こいつは馬鹿なんだとおもう。


「おい」

千回の素振りを終えて宿に戻ろうと思えば、声を掛けられた。
振り向けば、いつぞや見た図体のでかいノアが居る。
ただし今日、そいつからは全く以って、何の殺気も敵意も感じられない。只俺を見たまま立っている。

「何の用だ」

抜きかけた六幻を収めて聞いてみれば、一拍置いて遊びに来た、と言った。


人気の無い寂れた学校跡、俺とそいつは立っていた。
「階段に、座るか?」
「…俺はいい」
そうか、と奴はどっかり座り、裸に羽織ったコートから菓子を取り出して口に放り込んだ。本当に遊びに来ただけなのか。疑うことも阿呆らしくなってくる。
こいつ、頭が足りねェんじゃねぇのか。と訝しんで見ていれば、おまえも食べるかと差し出す。
「ロードに貰ったボンボンだ」
「…いらねェ」
「酒は嫌いか。
酒じゃあ無いのも、あるぞ」
「酒も、甘いのもご免だ」
「己は、甘いものが好きだ」
「良かったな」
奴の周りには包み紙が散らばる。
一度断った後は、菓子を食うだけの奴を見ながら、ずっと立っている。
何がしたいのか、さっぱりだ。
暫くコートをごそごそ探った奴が、ふいに眉を顰めた。
「帰る。もう空になった」
奴が立ち上がって階段を下りて来た。
からからと、風に捨てられた紙が舞う。
「………じゃあな」
結局良く分からないままに別れを言うと、後ろを取られないように奴が帰るのを待つ。
なのに、奴は中々帰らない。
「帰るんじゃねぇのかよ」
「おまえは、美しいのは好きか」
「…あ?」
いきなり何か言い出した奴は、俺を見つめてそう聞いた。
「己は好きだ」
「……そうかよ」
早く帰れ、と思いつつ生返事すれば、奴は何かに気付いてズボンをまさぐる。
取り出されたのは、へしゃげたキャラメル。
奴はじっとそれを見た後、俺に近付く。
帰るんじゃねぇのかって。
軽く六幻に手を掛けたまま動向を見ていると、やたらめったら巨大な手が眼の前に突き出された。
「…やる」
「あ?」
「己のキャラメルだ」
じっと、俺が手を出すのを待っているらしい。
片腕を突き出した姿勢で、奴は俺を見ていた。
仕方なく柄に掛けていた手を出せば、コロンと生温い塊が落ちて来て、奴は俺に背を向け歩き出した。
「何なんだ」
本当にあっさり帰ってしまった奴に、何故か苛っとする。
甘いのはご免だって言った筈だ。
へしゃげたキャラメルは不格好で、俺はそれをふんと投げ捨てた。

fin


後書き

………スキン君難しい…!
ってかあれだよね、もう問答無用で戦闘の筈だよね。まぁいいや。(ぇ
何だか神田が三割増しで馬鹿だ。
……いや、こんなもんかな。(え
あんまし11巻も読み込んでないんでかなーりエセですね!!(爆


write2007/7/14
up2007/7/14

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