StoryY

□Living Dead.
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        最初で最後の

   明日をあなたに














久方ぶりの気分で目を開けば、そこは薄暗く白い部屋だった。
ゆっくりと瞬きをしてみても何も見当たらない。
白く四角く、高い天井だけが視野に入る。

………此処は?

固くも柔らかくもない床から体を起こし、呟く。
思い出せない。
何があったのだろうかと考えるが、無駄だった。
ヒントを探して自分に目をやってみる。
白いシャツ。白いズボン。足には何も履いていない。
自分の影が異質に見えるほど、白く白く整った空間に、肌と四つの腕輪だけが悪目立ちしている。
此処はどこかなど忘れさせられる全てを吸い込み消し去る夢の世界。

誰か、

恐る恐る声を出す。震えを気にかける余裕はない。必死に声帯へ空気を送り込む。
しかし、努力空しく。
音は響く事なく不動の空気に飲み込まれ、消えた。

誰か、いないんで、あるか

再びの静寂。
息が詰まる。
底知れない混沌に飲み込まれるかのような気分に陥り、声を再び張り上げる。

返事を……!!誰かッ、

あまりにも整い過ぎた空間だった。
声を出すことにすら恐怖を覚えるほどに美しく。
身じろぎ一つにすら罪を感じるほどに完成した。

…………誰も、いないのであるか?

どんな万物も不要な空間。
そう。
それは生という不確かさの拒絶。

「カーワイイ」

ニィ、と笑みを作りながら少女は呟いた。
自身でも掌握し切れぬ力の切れ端の中、ヒトとして尤もな反応を見せる青年を細めた目に映して、あどけない表情を作る。
いつまでも飽く事がない。少女には疾うの昔に疎遠となった感覚を、愛しい被験体は開けっ広げに表す。その様は酷く愉快だ。

「クスクス」

可笑しくて堪らないのは何故なのだろうか、少女は懸想する。
不安定で曖昧なものだと、歪み遊ぶ自身の足元を見る。
力。
飲み込まれたのは彼だけではないのだろうと、並外れた少女はまた笑みを煌めかせた。

fin


後書き

バトンからの創作ー!
「最初で最後の明日をあなたに」でした。
うちの二人はお互いに行き過ぎちゃったロード→←クロですからね!!(言い訳)
ロードたんの不可思議さとクロたんのかわゆさは相入れない所があって素敵だと思います。


write2008/3/17
up2008/3/19

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