StoryY

□Way Out
1ページ/1ページ

気が付けば、私は死体を摘み上げたまま、広い広い舞踏場の直中に居た。
逃げ回る人々を一度だけゆっくりと見回し、そして。
皆殺しに、した。

《Way Out》

目を閉じても何の音も聞こえてこない。ただ横たわっているだけの時間をやりすごす。一人はツマラナイ。隣に居るのはどんな奴でも構わなかった。目を閉じればこちらにまで確かに響く温かな鼓動。それを聞いていれば、馬鹿馬鹿しい擬似睡眠さえ悪くは無かった。どうせ、朝になれば隣の男は冷たくなっていたけれど。

――――わたしの この目を あげましょう。
――――わたしの 耳さえ 惜しみなく

興奮の後のぼんやりした意識を振り払って、顔を上げれば何時だって醜いそれが見えた。綺麗な私は、何時だって醜いそれ。
気に食わない事は出来るだけ忘れた。光る宝石は綺麗な私に良く映えた。豪奢なドレスは綺麗な私に良く似合った。顔の良い男も、金持ちな男も、権威有る男も、綺麗な私にひざまづいた。
そして、次の日には全部ただのゴミ。

――――助けを 求めたりしないでいいように
――――期待は捨てたはずだけど

だから、一人。私は一人だった。
綺麗な女は、大抵孤独か短命か不運なものだから、魂なんて無い私に短命を選択出来る訳でもなく、けれど、私は不運なんてものとも無縁だった。
途方も無いスベテを、刹那に変えた。

――――わたしの 唇も全部あげましょう。
――――ここから出してくれるなら

私が死ぬことは無く、私が殺されることも無く、私は綺麗なままで、私は醜いままだった。

――――いつまで何のために?
――――いつまで誰のために?

だって、私は。

――――私は誰なの?

だけど。
なのに。

――――わたしの この血を あげましょう。
あいつが呼ぶから。
あいつが縋るから。
あいつが笑うから。
ちょっと、ほんの、少しだけ。

――――わたしを リボンで 飾りつけ

光る宝石も、豪奢なドレスも、あいつの隣には相応しく無かった。
無駄に情けない、ガラクタまみれの、嫌われ者なんかには。
綺麗な私だけでも十分過ぎたから。
全てが違ったから、全てが似合わなかったから、当然の様に、必然の様に、

あいつの心臓は、朝になっても冷たくならなかった。

――――わたしの 涙まで全部あげましょう。
――――もし抱き上げてくれるなら

私が呼べば、あいつが振り向いた。
私が縋れば、あいつが驚いた。
私が笑えば、
      あいつも笑った。

――――いつまで何のために?
――――いつまで誰のために?

無駄に。
馬鹿馬鹿しい自信があったのよ。
あんたの傍に居たときは。
私が死ぬことは無くて、私が殺されることも無くて、私は綺麗なままで、綺麗なままかもしれないって。
ねぇ。
馬鹿みたいに。

――――それでもまだ誰かを呼んでる
――――出口はどこにあるか教えて
――――どこまで行けばいいか教えて

ねぇ。

――――独りにしないで
――――独りにしないで

ねぇ、アレイスター。
私はいつもどんな風に見えた?
私は誰よりも綺麗だった?
私は貴方の何だった?

私は、貴方を、愛してた?

――――出口はどこにあるか教えて

ほら、アレイスター。
譲ってあげる。
手を取りなさい。
私の手じゃないわ。
あっちが、出口みたいよ。

――――どこまで行けばいいか教えて

どこまでも行きなさい。生きなさい。活きなさい。
ねぇ、アレイスター。
ねぇ。ほら。
…………笑ってあげるから。

fin


後書き

意味不……!!
アレクロ病み系の筈が……


write2008/7/4
up2008/7/4

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ