StoryY

□君が触れた。
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「アレン」
ふと本から頭を上げたクロウリーが、隣で微睡み始めていたアレンの頭に触れた。
ふわふわと上下に振れていた睫毛が驚いて持ち上げられ、まだぼんやりとした銀灰がぱっとクロウリーを見る。なんですか、と聞く声はどこか舌っ足らずな音を含み、まだ眠気を纏っていることを窺わせた。任務の疲れがまだ色濃いらしい。
若干済まなく思いつつ、ふむ、と喉元で感嘆詞を発したクロウリーは、二、三度アレンの頂頭を撫でてから優しく微笑んだ。
「背が伸びたであるな」
え、とアレンが瞬きした。思いがけない指摘に、ぱちりと目は覚めた風だ。頭の上に乗っている手は、ゆるゆるとまたその真白い髪を撫で始めている。そうですか?と小首を傾げると頭から滑り落ちた手が頬に触れる。
手は温かく、頬を優しく包む。クロウリーは無自覚だったアレンに笑いかけると、小さく肯定の動作を返した。
「伸びたである。前は私と並んで座ると肩口にこめかみが触れていたのに、」
一旦言葉が切られ、頬の手がアレンの背を捉える。そしてそのまま無防備な上半身がぐい、とクロウリーに引き寄せられた。
予期していなかったいきなりの行動に、傾いで不安定な体勢になったアレンは慌てて目の前のマントを掴む。つんのめった体勢ではあるが体が止まった。そうしてから、腕を突き下肢を据え直す。
はあ、と肩が一つ振れ、また顔がクロウリーを見上げた。やや困ったような、怒ったような表情だ。よっぽど慌てたらしく頬がやや上気している。
クロウリーはそれを待って、苦笑しながらほら、と自身の肩口を示した。
「今は頬が触れている」
先程よりもやや近付いた体は確かに言葉通りの状態になっていた。今肩に並んでいるのは、さらさらと揺れる頭髪ではなく紅が注したその頬。ついこの間までの位置とは、見違えるほどにズレが出来ている。
自身でも何度か目と手で確かめた後、ホントだ、とアレンが呟くと、クロウリーが嬉しそうに笑んだ。それでも足りなかったのか、何度目かの手の平が長めの髪の毛を撫で付ける。
「アレンは成長期なんであるな。気付かぬうちにどんどん大きくなる。
いつか私も追い抜かれるかもしれない」
ニコニコとそんな事をいう姿はまるで子供の成長を見る親の様だ。どこか期待を滲ませた声は蕩けそうなくらい優しい。
アレンは先程に加えて頬を赤くしながら、大袈裟ですよ、と反論した。それでもやはり嬉しさは隠し切れずに、少しだけ距離の縮まったクロウリーを見上げ、はにかんで目を細める。クロウリーもそれを認めると、うむ、とアレンの髪を梳く。くすぐったそうに頭が揺れ、悪戯っぽい声がまぁ、と続けて述べた。
「神田位ならすぐに追い抜きますけど」
そうであるな、と返された言葉に、朗らかな笑い声が続いた。

fin


後書き

うわぁぁあ語尾キモい\(^Q^川)/
てかこれをアレン&クロアレと言い張る自分にちょっと説教させて下さいwww


write2008/7/4
up2008/7/4

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