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□意地悪トリック!
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ぴちち、ぴちち、と窓の外から鳥の声が聞こえた。目を開くと見慣れない部屋で、慌てて起き上がる。
そして、ああ、と納得した。
……ここ、クロちゃんの部屋さ。
解ったところで目を閉じながらまたベッドに身を投げる。
昨日脱ぎ散らかされた服が酷く皺くちゃに放置されているのが先刻一瞬見えたけど、それを畳むような元気は無い。ぼんやりとシーツに包まって微睡む。
もう大分寒い外気が薄く開いた窓から吹き込んでいて、オレの裸のヒフを苛んだ。
火照ったままの体には、奥の方にいやぁな感触がドロドロと残っていて、俺の動く意思を更に削いでくれる。
あー、怠い。
「まだ寝ているんであるか?」
声に目を開けると、どこからか戻って来たクロちゃんがにこりとしながらベッドに腰掛けるところだった。
うわぁ憎らしっ。
とぼけた台詞にムッとした表情を見せる。見える微笑みが一層大きくなる。絶対に楽しんでるよな。
クツクツと喉の奥では笑っているのが分かっていたから、こんな風にしたのは誰さ!なんて口には出さないけれど悪態をついてみる。
あからさまに頬を膨らませても気にする素振りも無い。どうしてオレの周りにはこんなにエセ紳士が多いんだろうか。それともクロちゃん、あの可愛いー――い少年に毒されてる?
そんな事を考えていると、クロちゃんがはい、と俺に水の入ったグラスを差し出した。
……まさか、何もハイってないよ、な?
無言で見上げると笑顔にぶち当たった。
「アリガト」
大人しくそれを受け取り、そっと口をつけた。
冷たい水が、つううと体内に落ちてなじむ。
思った以上に喉が渇いていたらしく、グラスは見る間に空になっていく。
ひんやりと心地良いグラス、名残を惜しみつつ口を離すと、パタン、と顎からシーツに水滴が垂れた。つい声が出た。シーツに丸い染みがパンと広がる。
急に顎が持ち上げられて舌が這う。
「ッ!?」
体中が粟立ちゾクリと背中が震えた。
体を離そうとしても、顎を掴まれていて、動けない。
熱くなっていく体に、温かく濡れた長い舌がつつうと滑る。
ぴちゃんと舌と肌の間で音が起つ。わざと、か?わざとに決まってる。
夕べ散々聞かされた淫音に似た、水音。
声も出せずにギュッと目を閉じる。耳元で心臓が五月蝿い。熱い。鳥肌。
下っ腹が、くるると鳴いた。
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