Story[

□don't lie
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僕が。
僕が、
僕が貴方に思慕を抱いているのならばこんなに酷いことが出来るはずがない。そうでしょう?どうして恋焦がれる人に馬乗りになって、身包みを剥いで、それでどうして、こんなに酷いことを出来ると思うんですか?ねぇ、そうでしょう?僕が貴方に恋なんてしているはずがない。僕はただ。恋なんてしているはずが。
ああほらわかるでしょう、そんなに苦しそうに息を詰まらせて。僕くらいの体重でも、僕程度の力でも痛いでしょう、苦しいでしょう。目尻が濡れてる。怖いんですか?ほら、もうわかってくれましたか。どうして好きな相手を怖がらせたいと思うわけが。僕は貴方を愛してなんか。ないんです。違います。どうしてわからないんですか。ほら、血が出てる。乱暴にしてるからです。貴方のことなんてまるで考えずに貴方に乱暴を働いているからです。もういい加減気付いてください。泣いてる癖に、青褪めてる癖に、震えてる癖に。認めてしまえばいいじゃないですか。貴方の勘違いなんです。僕は貴方に恋なんてしてません。そう思えば良いじゃないですか。
わかってるんですよ。
怖いんでしょう、動けないくらい、叫べないくらい。嫌でしょう、自分の体がどんどん汚されていくように感じるでしょう、世界から見捨てられたような気分になるでしょう。ほら、僕のせいですよ。僕が貴方を汚してるんです、世界から引き剥がしてるんです。ほら、僕が悪いんです、酷いでしょう。
今感じている痛みも気持ち悪さも恐怖も絶望も、全部僕のせい。ねぇ、そんな僕が今何を考えてると思いますか?貴方に罪悪感を持ってると思いますか。違います、僕は、貴方のことなんてなんとも思ってないんです。ねぇ、少しでも、思いを寄せている人に。こんなことが出来ると思います?思わないでしょう。そんなに歯を食いしばっても止めませんよ。僕は、僕は貴方のことを好きなんかじゃないんだから。
もっと酷く動いてみましょうか?脚を持ち上げてみましょうか。引き攣れて、壊れてしまいそうなくらい痛いでしょう。閉じかけた、固まりかけた傷口が開くのがわかるでしょう。ほら悲鳴が漏れた。やっぱり痛いんじゃないですか。でも口を開くと緩みますよ。ああ、ほら奥まで入った。痛いですか?開いたことの無いところですよね。でも大丈夫、貴方が勘違いだって気付いてくれれば、すぐに終わりますから。さぁ、僕は、貴方を、愛してますか?まだ言い張るんですか?強情っ張り。もっと痛く、気持ち悪くなるだけですよ。
……どうして、どうしてわからないんですか。僕は全然、違います。そんな訳、だって、僕は、貴方を。
ほら、抵抗してください。僕は貴方を殴り付けてでも続けます。貴方のことなんて、好きじゃないから。だから。
背筋が痛いでしょう。強張った体がもうすぐ痙攣を始めます。初めてだから、混乱もしてるんじゃないですか。もう止めましょう。ほら、認めてください。
僕は貴方に乱暴をしてるんです。僕は貴方を玩具にしてるんです。ねぇ、ほら、そんなに僕を見ても無駄ですよ。止めま、せん。
泣いても、叫んでも暴れてもダメです。大人しく、認めるだけでいい。そうすれば一度で済みますよ。何度も怖がらなくていい。夜だってゆっくり眠れる。吐き気だって、知らずに済みます。
今認めるなら、僕が全部片付けてあげます。ダメになったシーツも、汚れた服も、処理だって処置だってしてあげます。今認めなきゃ、何もしてあげませんよ。自分で、痛む体で、重い体で、千切れた意識で、震えながら始末しますか。できますか。自分で掻き出せるんですか?その傷を自分で触って、思い知りたいんですか?
ああ、自分は乱暴されたんだって。
自分は冒されてしまったって。
認めてしまえば楽になります。僕が貴方を愛していないって、だから貴方に乱暴をしているんだって。そう考えれば、もう怖くないから。期待をするから、傷付く。
ほら、さぁ、認めてください。僕は、貴方、なんて、好き、じゃ、な、
「ッアレ、ぁれ、んっ、アレ―――、アレンっっ、あれ……!」
――――止めてください!
僕の名前なんて呼んでもダメだ!ダメです!僕は!貴方なんてッ!
ほら、早く言ってください!
勘違いだって!
僕は!
僕が。
怖いなら。
痛いなら。
言ってください。
縋っても、へつらっても、止めてなんて、貰えない。終わらないんだから。
ほら、素直に、期待は捨てて、諦めて、ほら言ってください。
僕は全部、僕には全部全部全部。
わかってるんです。
……わかってるん、です。

fin


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