Story[

□踊る笹舟
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水に浮かべた木の葉が回る。ぐるぐる。止まらない。沈まない。
僅かな水紋が拡がる。遠くまでは伝わらない。その場だけ。
ぐるぐる。
ぐるぐる。
ぐるぐる。
「……くっっっっっっらいですねぇ!!!」
後ろから声がした。
ばしゃりとオレがしゃがみ込んで覗き込んでいたバケツが蹴り倒されて中に入っていた水も浮かんでいた木の葉もどばーと地面に零れて地面に染み込んでアトカタも無くなって……ええええええええ。
「……ッ」
「あれ、どうかしましたか?」
振り向けばにっこりと人の悪ぅい笑いで思った通りの人物が立っていた。
「何すんさ折角人がアンニュイーでシリアスーな気分になって思索の小路を気持ち良ーく散歩してたところを!」
思わず声を大にして迫ればあぁそれはすみませんでしたなんか陰気でウザったかったのでなんてさらりと流される。あんまりにさらっと流されたもんでお前オレの話聞いてる?聞いてくれてる!?と泣き付くことさえ馬鹿らしくなった。
「ああ……なんなんさぁ……」
「ドンマイ!」
肩をポンっていやいや、アナタ誰のせいで落ち込んでると思ってるんデスカ?じろり見れば黒い笑み。すみませんでした。ってオレ悪くなくね?
仕方なく何か用?と尋ねてみれば、ああ、クロウリーが、とビミョーな表情が返ってくる。少し、肩に力がこもる。
「……何かあったんさ?」
「いや……笹船の作り方を教えてほしいそうです」
笹舟て。
がくー、とこもった力どころか全身の力が抜けた。
「ティモシーと遊んであげようと思ったら作り方を知らないせいで仲間に入れてもらえなかったみたいで。さっき半泣きで僕の部屋に来まして」
さいですか。
「ちょ、クロちゃん何歳児なんさ……」
と言いつつも何となく納得できてしまって加えて苦笑した。クロちゃん、ナイス。
「ラビでも笹船の作り方くらいは知ってますよね」
あれオレひょっとして馬鹿にされてる?ひょっとしなくても馬鹿にされてる?
「知ってるって」
じゃあちょっと来てください、と手をこまねかれて、オレは転がったバケツを置き直してから歩き出した。笹舟ねぇ。ジジィが笹持ってたかな、確か。
考えながら、雑談しながら。ようやく着いた部屋の前でノックをする前に。
「いつものラビになりましたね」
ぼそりと声がした。
「感謝してくださいね、譲ってあげるんですから」
「へ?」
何の事?
「笹船の作り方くらい、僕だって知ってますよ」
こんこん、とオレの手を押しのけてノックされる。開いたドアの向こうから鼻水を垂らしたクロちゃんの姿が現れた。ちょ、だから何歳児さアンタは。
「アレン……ラビっ」
「ああほらもう泣きやんでください、ラビが教えてくれるそうですよ。ねぇラビ?」
「ん?あ、そうさ!笹舟から潜水艦までどーんと「ほらこんなことも言ってますし!」
ちょ、遮られた。えーと見ればこっちなんて無視してすごいであるな!無駄なスキル持ってますよね!なんて笑い合ってるし。
それでも、オレも笑って無駄ってなんさー、と言い返した。ついでにクロちゃんに笑いかけてみる。
「良く進む笹船の作り方、教えたげまっしょー!」
ぱあ、とクロちゃんが嬉しそうに笑って頷いた。

fin


後書き

笹舟てwwwないわぁwww
初ティモは名前だけです。というかクロたん出てこねぇ―。


write2009/4/21
up2009/4/26

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