Story\

□月下三日月
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ぐちゅりと無理に挿し込まれた熱が躊躇う事無く私の内側を舐め上げて掻き回していった。私の下で半ば枯れかけていた草が潰れて強い青さを撒き散らす。叫び声は葉擦れの音に消えてしまう。辺りに騒ぐ虫の声が耳に付いて、まるで私の体の中を這い擦り嘲っているような気分になる。
突き上げる感覚に訳も無く泣きたくなり、途切れる声を必死に繋いで悲鳴に変える。
「泣いてるんですか?」
私の上の月に照らされて暗い顔。細く細く欠けた三日月が私を見下ろしている。私が草を殺していくのを。私が虫に殺されていくのを。

ああ、哂れている。

「ッひ、ア゛ッ」
ぐちゅぐちゅと音を起てて抽挿が繰り返されている。私の肩を手の平で射止めて激しくはならない。決して衰えもしない。同じ様うに続く。私の死も月の嘲りも。私を動かさないものと反対の手の平が私の動かない性器をぐちぐちと嬲り回す。濡れている。滑らかに擦れ合うのは夜露のせいかそれとも知らない合間に私の中から何かが零れてしまったものなのかは判らなかった。
私は土を掴んでいた手を渾身の勇気を振り絞って動かし私を殺し終わらせないその背中にしがみついた。
土や砂や草や苔が私の背中で踊っているのを忘れる為に声を御すために集中する。忘れる様に溺れて、溺れる様に息を止めた。私の中をまだ撫で探る杭は度々方向を変えて私から何かを削り取っていた。
「     」
私の上で私を殺す。私の中で私を殺す。私の表面で私を殺す。
それでも私は留められたまま殺されない。
濡れている。何かに濡れて、塗れている。そして。
「     」



汚れたまま草むらの中で座り込んで口を開けて息をした。肺は大きく膨らむ事を躊躇い極浅く働くに留まる。私は私の目の前で私から飛び散った土や草や何らかの液体を和やかに払っているきらきらと銀色の柔らかい体を見ていた。
優雅に動く肉体。私を殺し留める身体。
うら若くけれども い彼は座り込み続ける私を見ずにくすりと笑って私に背を向けぐんと背を伸ばす。
「三日月が一杯付いちゃいましたね」
赤く赤く滲んだ五対の三日月が私を覗く。
「 いなぁ」
私を詰る十一ヶの三日月。
私は振り向いた笑顔に、六対目の完成を見た。

fin


後書き

書いてる時は何が何だかでしたが、書き終わってみるともしやこれはクロたんがまだ自殺願望ありありなアレだったのかもなぁ。などと。
しかしアレン様酷いなあ。まあ元々僕の中ではこんな感じだったけども。あんまり酷く見えないのは共依存的だからでしょうな。
最近甘甘なアレン君しか書いてなかったので原点回帰ですね。


write2009/9/29
up2009/9/29

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