駄文

□噂のあたるちゃん
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 「ダーリン起きて」
 「あ?」

 気持ちよく寝ていたあたるは、突如強引に叩き起こされ、のっそり身体を起こしたものの、眠くて頭が回らない。ぼんやり叩き起こした本人を睨んだものの、その手元にぶら下がっているある物にふと目が止まった。

なんだ?


 「はい♪︎」

 ラムは手に持ったソレを、あろうことか男である自分に差し出してくるではないか。
 眉を潜めたあたるは、思わず不満気な声を出した。

 「…何のつもりだ?」

 こんなものを手渡されても…俺が興味あるのは入れ物よりも中身なのに…とラムとブラジャーを交互に見つめていると、いきなり伸びてきた手がパジャマをはだけようとする。
 あたるは驚いて「何をするっ!」と、大袈裟な抵抗をみせたが、実は淡い期待を隠せずにいた。
 男たるもの女に襲われては…と言うのは詭弁で、実際、女性から積極的に迫られたりすると、大半の男はウハウハだったりする。あたるも当然その1人だからだ。
 だがしかし、相手はラムなのだ。
 気恥ずかしさ故に、焦ってラムの手を掴もうとしたところ、目に入った自分の胸の膨らみに硬直してしまう。

 時は遡る昨日…。
 婿探しに勤しむクラマ姫に見初められた竜之介が、実は女だったと知ったカラス天狗達が、姫が気付く前に竜之介を男にしてしまおうと性転換銃を持ってやって来たところを、あたるがいつものごとく何も考えずに銃を弄くり、誤って自分に放射してしまい、女となってしまったのだった…。

 2年4組のほぼ全員が恐怖におののく中、何故か当の本人は冷静だった。
 何故なら…叫び出したい衝動に駆られる本人よりも、周りのパニック状態の方が凄すぎたからだ。こうなっては叫ぶに叫べない。
 実に不運な男…諸星あたるである。
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