駄文
□甘い予感(コースケあたる)
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「最悪だな。」
午後の授業をエスケープして、茶店でまったりしていたコースケとあたるだったが、学校に戻ろうと店を出て暫くして、突然の豪雨にあってしまった。
降り出した強い雨に濡れながら学校に駆け込む2人。
「くそっ。全身びしょびしょじゃ。」
脱いだ学ランを振り回して水を切るあたるに、
「こらっ、やめんか。水が散る。」
コースケも脱いでやり返す。
2人はしばらくそうやってじゃれ合っていたが、チャイムの音に我に返った。
「…何はともあれ、このままでは教室に戻れんな。どっか空いてる教室で時間潰そうぜ。」
「そうだな。」
周囲に気を配りながら、廊下を小走りし、使われてない美術室に入った。
「裾が濡れて気持ち悪いな。」
「おい、いくら何でも、ズボンは脱ぐなよ。…女が脱ぐのは大歓迎だが、男が脱ぐのは見たくない。」
「…同感だ。」
2人はズボンの裾を膝まで折って、教室の椅子に座った。
「しかしなんだな〜、誰もいない教室って、気味が悪いくらい静かだな。」
「アホか。当たり前だろ、誰もいないんだから。」
馬鹿にしたように返すコースケにムッとしながら、あたるは大げさにため息を吐いた。
「男2人じゃ洒落た会話も出来ん。つまらん…。」
「悪かったな。どんな洒落た会話だ。」
口を尖らせて文句を言うと、あたるが屈託なく笑う。
何だかんだ言いながら、他愛もない会話を続けていた2人だったが、突如あたるは欠伸をしながら、机をガタガタ動かしてくっつけ、その上に寝転んだ。
「寝る。」
「…。よくそんなとこで寝れるな〜。」
感心しつつ呆れるコースケだった。
「お前も寝る?」
「無理。」
コースケの即答に苦笑しつつ、あたるは目を閉じてしまった。
雨音とあたるの寝息だけが響いている。
手持ち無沙汰なコースケは、美術室の作品を眺めたりしていたが、それも飽きて、寝てるあたるの元へやってきた。
「おい、あたる。」
「……」
完全に寝入っている。
仕方なく、あたるのそばに椅子を寄せ、座り込み、寝顔なんぞ覗いてみる。
「気持ち良さそうな顔しやがって…。」
ふと悪戯心が湧き上がり、あたるの頬や首筋に指を這わせてくすぐってみる。
「んん…。」
眉を寄せ、ピクッと身体を震わせるあたるに、してやったり、と口元が緩む。
コースケは、そ〜っとYシャツの襟元の中に指を這わせてみた。
「…ンっ…。」
びくっと震えながら、甘えたような声を漏らすあたるにどぎまぎして、指を止めてじっと顔を覗いて見た。
「あたる?」
起きたのか?と思い、顔を近づけて覗いてみると、2、3度瞬きをして、あたるは閉じていた目蓋をゆっくり開いた。
そしてぼ〜っとコースケを見ていたが、突然にんまり笑うと、コースケを引き寄せ唇を重ねた。
「〜っ!」
コースケは突然のあたるからのキスにパニクって、離れようともがくが、思いのほか強い力で抱きすくめられていて、なかなか離れられない。
それどころか、片方の手は尻を撫で回すものだから、気持ち悪くて思わず、頭を思い切りど突いてしまった。
「〜痛っ。何をする。」
「…それは、俺の台詞だ。馬鹿者!」
息を切らしながら真っ赤になってコースケが叫んだ。
「何を怒っとるんだ?」
「何をだと?ひとの唇を突然奪っておきながら、ど〜いうつもりだ!」
「あ?誰が奪ったって?」
「お前だよ、お・ま・え!」
コースケがあたるを指差して怒鳴ると、あたるの顔が見る間に蒼くなっていった。
「うげぇ〜っ。口が腐る。」
口を抑えてもんどりうつあたるに、コースケは呆れた。
「…失礼な。被害者は俺だっつ〜の。どうせ女の夢見て寝ぼけてたんだろ。」
「ぐ…ン…」
口を抑えて律儀に頷くあたるに苦笑しつつ、コースケはあたるの頭を軽く一発殴った。
「この貸しはデカいからな。」
「悪かった、謝る。でも、ワザとじゃないんだぞ。」
「ワザとやられてたまるかっ。」
そう憤慨しながらも、キスはそんなに嫌な気はしなかったので、内心、これってヤバくねぇか?…と、焦るコースケだった。
END