駄文

□視線を逸らさないで(面あた)
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 面堂は悩んでいた。

 何故なら、常日頃、生意気で目障りで鬱陶しい奴だと、心の底から憎らしく思っていた男に、突然自分のことを好きなんだろ?と言われた挙げ句、キスされたからだ。
 …といっても、色気も何も無い、一瞬触れるだけの味気ないキスだったのだが…。
 思いのほか、嫌な気はせず、むしろ一瞬だったのが残念なような……という気持ちが強かったのがショックで、驚いているのだった。

 僕は…どうしてしまったのだろう。

 何度もリフレインする、あたるの挑発的な瞳と口付け…あたるが吐いた言葉…。

彼は…言ってなかっただろうか。

 「他人のことは気になって仕方ないくせに、自分のことには鈍感なんだな」
 「そっちがその気なら、こっちも気付かなかったことにしといてやる」
 「あんまり、俺を見るな」

 やたら上から目線の発言が多いので、「何を偉そうに…」と、腹立たしく聞いていたのだが…諸星らしい僕への配慮だったのかもしれない。

 …では何か?実は、僕は諸星のことが好きで…知らず、無遠慮な視線を諸星にぶつけていて、諸星は迷惑だと…。僕に見られると落ち着かない、と言ってるのだろうか…。

 じゃあ、あのキスは何だったんだろう…。
 男に興味の無いあの男が、好き好んで男にキスするとは思えない…。

 考えれば、考えるほど、頭の中があたるに侵食されて行くようで、大きなため息を幾度となく吐いてしまう。

 今更ながら自覚してしまった淡い恋心に苦笑する。
 しかも、その相手にキスされた挙げ句、これ以上踏み込むな、と釘をさされるとは…。
 それはつまり、あたるも面堂を意識してる、と自白しているようなもので。自然、口元が緩む面堂だった。
 
 悪戯心が騒ぐ。
 明日は…彼が嫌な顔をして視線を逸らすまで、ず〜っと見つめてやろうか…。

負けず嫌いで意地っ張りの諸星のことだから、逸らすことはなく、きっとお互い睨みあいになるだろうがな…と、面堂は、その光景を思い浮かべ嬉しそうに笑った。



   END
 

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