小説置き場
□夢現と薔薇と。
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「現兄さん、どうしたの..?」
「あ、いや、これ、貰ったんだ」
「へえ .. 」
リビングで花瓶に生けられた黄色の薔薇を見つめる現兄さん。その顔は何処か柔らかく嬉しげだった。
「夢、知ってるか?」
「ん?..何が?」
ふわりと、いつも僕には見せないような笑みを見せながら僕に問いかける現の隣に座る。
「黄色の薔薇の花言葉、って、友情なんだって」
「へえ、そうなんだ .. 」
知ってるよ、と思いながらも言葉では初めて聞いたように返しうつつが思い浮かべてる人物に怒りを抑え柔らかく笑む。
「クラスの女の子にもらったんだ。花なんてもらうの初めてだし、可愛いなぁって.. 」
「 僕よりも可愛い?」
耐えきれず口に出た言葉は自らが思っていたよりも気持ち悪く、醜い、花と比べるなんて 、と思いつつも出てしまったものは仕方ないのだ。
「ばーか、お前のが可愛いよ。」
現の顔が近づき僕の瞼にキスを落とす。その後席を立つと、買い物行ってくる、と何処かへ歩き出す。扉の閉まる音が聞こえ、僕も立ち上がった。
ため息をつきながら薔薇の生けられた花瓶へと近寄り、自らの手に棘が刺さるのも気にせずに一輪手にとった。
「ねえ、現、知ってる?」
もう片手を動かし花弁を優しくなでれば続ける。
「黄色の薔薇の花言葉 はね .. 」
指先で花弁を掴み、そして..
「あなたに恋をします、なんだよ。」
ちぎる、1枚、また一枚と、ちぎりは落とし、自らの手でちらせていく。
きっと今僕は笑っていないだろう。
花瓶の周りには落ちた花弁、黄色の薔薇には、赤色の液が滴っていた。