なっがい夢
□イル式ローマの歩き方part2
2ページ/7ページ
イルーゾォは、リビングの冷蔵庫に貼ってある、ホワイトボードに用があって来たのだった。
ホワイトボードとは、チームの全員の名前が書いてある表があって、夕食を名無しさんに用意してほしい人だけ、自分の名前の横にマグネットを張り付ける。ホルマジオが、いちいち聞いて回っていた名無しさんのために導入したシステムだ。
ノックをしても名無しさんが出なかったので、イルーゾォは勝手にそのマグネットを貼り付けに来たのだが、外を見ると一人で騒ぐ名無しさんを見つけたのだった。
『はっ!イルーゾォ……ありがとうございます、夕食のご用命ですか?』
「……うん、まぁ。いつもありがとう……」
『いえいえ。』
拾った洗濯物を受け取り、へらりと笑う名無しさん。
名無しさんの様子を見て、イルーゾォの眉間に皺が寄った。
(…………メローネのこと考えてたのかな……)
イルーゾォは、あばばばばばば、の時から名無しさんを見ていた。あの様子だと、メローネが名無しさんに何かしたのは間違いない。
しかし、何があったかはメローネにも、名無しさんにも、あれから問い詰めることはしなかった。
あの時は勢いで怒ってしまったが、メローネの言う通りだった。自分のものでもない名無しさんにメローネがどうアプローチしようが、口を出す権利はない。しかもそれを聞いてしまったら、なんか負けた気がする。
(かといって、こう、メローネのせいで名無しさんの心情が乱れてるのは…………)
嫌だったから乱れてるのか、芽生えた恋心に戸惑って乱れてるのか、イルーゾォには名無しさんが乱心の理由がわからない。
わからないが、後者だったら最悪だ。なんとかしたい。
なんとかするには。
(俺も……なんとか……頑張らなきゃ……。メローネがやりそうな変な事は……絶対しないけどな!悪しき変態め!)
ぐっ、と拳に力を入れ、強く空を見上げていると、
『鍵しめちゃいますよー』
「……えっ?……あぁ、ごめん、今行く。」
いつの間にか庭から部屋に入った名無しさんが、鍵をガチャガチャ言わせながら笑顔で窓に張り付いていた。
自分と名無しさんの温度差に、イルーゾォは少し恥ずかしそうに拳を開き、いそいそとリビングに戻った。