なっがい夢
□イル式ローマの歩き方part2
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名無しさんに促され、イルーゾォは部屋に入ると、中を見回した。何か居座る理由を探しているのだ。
が、特に手伝うようなものも、話のとっかかりになりそうなものもなさそうだった。
(うーん、こういう場合はどうしたものか……何もないのにダラダラここにいたら嫌われてしまう。)
ナチュラルに名無しさんにコーヒーを催促するプロシュートが憎たらしい。
イルーゾォが考えあぐねている間、名無しさんは冷蔵庫のホワイトボードを確認していた。
『あら、今日の夕御飯、イルーゾォだけみたいですね。』
「えっ、そうなの……ごめん……」
名無しさんの声にハッとし、同時に責められたような気がして咄嗟に謝ってしまうイルーゾォ。そんな彼に名無しさんは苦笑いを浮かべた。
『なんで謝るんすかー。今日はイルーゾォ、リクエストし放題ですよ!!何が食べたいですー?』
かかってこい!と腕まくりする名無しさん。
そんな名無しさんに、イルーゾォの心臓は跳ねた。たまたまだとしても、自分のためだけに、自分の好きなものを作ってくれるだと。やはり名無しさんは可愛い。
(ここで頑張らなくてどうする俺!!)
イルーゾォは鼻から大きく息を吐き出した。
「……作ってくれるのもすごく嬉しいけど……休憩したらどうだろう……たまには……外食でも……」
『はへ?』
「え?……いや、だから、毎日掃除に洗濯に食事に……大変そうだから……今日の夕飯は……外に……食べに行かない?…ご馳走するから………もちろん無理にとは言わないけど……」
名無しさんの驚いた表情に、イルーゾォの振り絞った勇気と声がどんどん縮んでいく。が、
『〜〜〜っ!!イルーゾォマジ懐深えっす!!ありがとうございますっ!!』
「えっ!?……いいの!??ハハ……そっか……!」
名無しさんの予想以上の反応の良さにイルーゾォの縮んだ声と勇気がまた元の大きさに戻っていった。
「……うん!……じゃあ、行こう!」
まずは誘う勇気から。
好きな女をかけて正々堂々!となった以上、男の端くれなら、ぐずぐずしているわけにはいかないのだ。