なっがい夢
□イル式ローマの歩き方
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その日、イルーゾォは、自室の中を歩き回りそわそわしていた。
(名無しさんは約束を覚えているだろうか……。)
そうあれから数日経って、いくつかの任務をこなし、今日はイルーゾォのオフの日。
名無しさんが二人で出掛けようと言ってくれた、「次のイルーゾォのオフの日」だ。
イルーゾォは名無しさんの居るリビングに行こうかどうか悩んでいた。
(どうせ、口約束だろうな……細かく日にちや時間を決めたわけでもないし………)
ほぼイルーゾォが誘導するように言わせた約束だ。もはや約束とも言い難い。
しかし、ハイパーネガティブなイルーゾォはいつだって、頭の中に想定しえる最悪のパターンを想定して生きてきた。
(俺がこうしてハナから約束を覚えていないだろうと決めつけてリビングを訪れなかったとする。しかし、名無しさんは約束を覚えていて、もう着替えて待っていたとする。このまま俺が名無しさんを迎えに行かなかったら……)
イルーゾォの頭の中の名無しさんが言う。
『約束破るなんてサイテー。死んで。』
……死んで……しんで……んで……で……で……
「ああぁぁあぁぁぁ!!!きょ、許可しない!!そんな事態は許可しないィィィィ!!」
名無しさんに約束を破られるより、自分が破ってしまう方がまずい事態だ。イルーゾォは頭を抱えて膝から崩れ落ちたが、
「はっ、こんな事しちゃおれん……!!」
すぐに体勢を立て直すと、クローゼットの扉を開けた。
黒か、グレーかブラウン。良くてブ ルーの服が並んでいる。
「なんで俺の服はこんなに地味な色ばっかなんだ!」
自分で選んで買った服にイルーゾォは再び頭を抱えた。デートの想定で服なんか買った事がなかったのだ。その中でも割とセンスが良く見えるであろう、グレーのパンツと黒のシャツを合わせ、部屋を飛び出した。