なっがい夢
□国民的スポーツ!!
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天気のいい日曜日の昼下がり。キャッキャと、近所の子供の遊ぶ声がする。なんとも、のどかな情景。
「うるせぇぇぇぇえええクソガキィィイイっ!!公園でやれぇぇえええ!!」
「ギャーーッ!!ママぁぁぁーーーー!!」
蜘蛛の子を散らすように子供達が逃げていく。フンッ、と鼻から息を吐き出すと、ギアッチョは窓を割れるほど強く閉めた。
彼は今めっちゃくちゃ機嫌が悪い。
それもこれも、先程任務の確認のためにギアッチョの部屋に来た、プロシュートがこぼした愚痴が原因だ。
(この俺を差し置いて、よりにもよってあの地味で根暗のイルーゾォが、名無しさんと二人でデートにいったんだぜ。有り得ねぇだろ?)
…………………………
「……別にいいけどよ!!!気にしちゃいねぇけどよ!!」
なんとも言えないイライラは、自室に籠っていても解消されないだろう。こんなことでせっかくのオフを無駄にするのも腹が立つ、適当に歩いて見つけた店で、昼間からビールでも煽ってやろうか。
「よし。」
座っていたベッドから立ち上がり、ギアッチョが自室を出た。のだが、再びギアッチョの額に血管が浮き上がった。
たまたまイルーゾォが入れ替わるように2つ隣の、彼の自室に戻ってきたところだった。
「「………………」」
お互いがお互いの存在に気付き、沈黙が流れる。二人とも眉間に皺を寄せている、雰囲気の悪い沈黙だ。その沈黙を先に破り、ギアッチョは藪から棒に、例の件を聞いてみた。
「……てめぇ、この間名無しさんと二人で出かけたらしいじゃねぇかよ。」
「………………」
イルーゾォは何も答えない。
何も答えない代わりに、ニヤァァっと、驚くほどいやらしく笑った。
「っ!!てんめぇぇええーーーっっ!!!」
ブチブチっと、血管ブチ切れる音が聞こえてきそうだ。
表情を鬼の形相にかえたギアッチョが、イルーゾォの方に走り出すより早く、イルーゾォはバタン、と自室のドアを閉めた。鍵までかける音がする。
「〜〜〜っこいつ!!!」
今の態度は許せない。人をイラつかせる天才かこいつは。
ギアッチョは悔しそうに奥歯をギリっと食いしばると、鍵のかかったイルーゾォの部屋のドアに一発、蹴りをお見舞いした。賃貸のシェアハウスを氷漬けにするわけにはいかない。リゾットにブチ切れられる。
「胸くそ悪ぃぜ……」
鬼の形相は崩れないまま、彼は玄関に向かった。
カチカチに凍りたくなければ、こんな日の彼に、誰も近付いてはならない。