なっがい夢

□君は着せ替え人形
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時計は午後二時。プロシュートの寝室。

メローネがビキニパンツ一丁でプロシュートのベッドに仰向けになっていた。プロシュートはベッドの横に立ち、伏せ目がちにあられもないメローネの姿を眺めている。

二人の美しさに、妖艷さに、官能的と言う言葉が最適である。女性なら思わず唾を飲み込む情景だ。


メローネは、恍惚の表情と、色っぽい吐息と共に、その桜色の唇を開いた。


「あー……すずしー」

「あぁ、エアコンが壊れたのは災難だったな。」

「そぉなんだよぉ、最悪だよ!プロシュートの部屋のエアコンは無事でよかったぁ。」

「そいつはよかった。でもな……」

プロシュートが無表情で長い足を空中に振り上げる。

「人のベッドにパンツ一丁でゴロゴロしてんじゃあねぇよっ!!!気色わりぃ!!」


「ギャアアアっっ!!」

メローネの頭にプロシュートのかかと落としが綺麗に決まった。

「頭にやることないだろー?!しかも革靴で!!せめてケツにしてくれよ!!」


飛び上がったメローネが不満そうに自身の頭をさすり、再びうつ伏せに寝転がった。


「プロシュート……機嫌悪いの?」

「機嫌良くても自分のベッドにパン一の男が寝てたらとりあえず攻撃するだろ!!」


普段はそこまで突っ込みをいれるタイプでもないが、メローネの斜め上を行く発言には、プロシュートでさえ突っ込まざるおえない。

プロシュートは眉間に皺を寄せ、チッ、と舌打ちをすると、

「……確かに機嫌悪いかもしれないな……。」

と、疲れたようにベッドの端に足を開いて座った。
そんなプロシュートの様子に、ピンときたメローネが茶化すように、両手の上に顎を置いた。


「ギアッチョとイルーゾォのことが気に入らないんだろー?俺を差し置いて名無しさんちゃんとデートにいくなんてーって感じ?当たり?」


メローネは、自分もさることながら、プロシュートの自意識過剰ぶりも、女性絡みのことなら尚更自信がある事も知っていた。

「……忙しさにかまけていたとはいえ、あいつらに先越されるたぁな……」

イルーゾォだけならまだしも、ギアッチョが名無しさんと出かけている間、プロシュートは任務に出ていた。まさかその間にそんなことになっているとは想像もしていなかった。
メローネに心中当てられたと思うと腹が立つので、はっきり正解とは言わないが、まぁ、ほぼ正解だ。

プロシュートの答えにメローネは考えるように頭に人差し指を向けた。

「んー……プロシュートは名無しさんの事好きなの?」

「ハンッ、女子高生かおまえは。好きな相手じゃなきゃデートに誘っちゃいけないか?」


そこに山があるから登る。それと同じでそこに可愛い女性がいるからデートに誘う。プロシュートはいつだってそういう姿勢で生きてきた。

「それもそっか。」

メローネはニッコリと笑った。かなり同意できたからだ。メローネはどちらかというと、誘うより誘われる方が性に合っているが。

「それにしても、ニッポン人はいいなー、好きだなー。俺も名無しさんとデートしたぁい。」


んー、と伸びをしながらメローネがニッコリと笑った顔を崩さずに楽しそうに言った。そんなメローネとは対照的に、プロシュートはメローネの言葉に眉間の皺を更に深くする。


「あぁ?これ以上俺のプライド傷付けようってんなら、黙ってないぜ。」

「アハハ、やだなぁ、思った事を正直に言っただけなのに。余裕ないと女の子に嫌われるぜー」


メローネが笑いながらも、プロシュートへの敵意を言葉に込めた。

プロシュートが名無しさんとデートしたい理由の半数以上は、彼の身勝手なプライドが占めるだろう。

でも俺は違う。日本が好きだ。女の子が好きだ。だから名無しさんも好きなのだ。

「俺は名無しさん好きだよ!着せ替え人形にして、毎日俺の好きな服を着せて……。あぁー楽しそう!」

メローネはぴょん、とうつ伏せから軽やかに体勢を変え、胡座をかいた。プロシュートも少し考え、大きく開いた足を組んだ。



「……着せ替え人形か……。その気持ちはわからんでもない。」

「だろぉ?」

可愛い女の子が自分の選んだ服を身に纏い、自分の選んだ色の口紅を指す。自分色に染める。それを脱がすことまでできれば完璧だ。

メローネとプロシュート、全然違う二人に見えて、容姿端麗という共通点があるだけで、中身にも共通点が生まれるものだ。

「……俺は今日仕事オフだけど、プロシュートは?」

「…………仕事はない。」

「マジ?!じゃあ今日やろーよ、今日!着せ替え人形!」

「………………ハンッ。」


同意を求め、ニコニコするメローネを見下し、呆れたように鼻で笑ったが、プロシュートは既に引き出しから財布を取り出していた。
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