なっがい夢
□イル式ローマの歩き方part2
1ページ/7ページ
今日もイタリアはいい天気。
名無しさんは乾燥機に入り切らなかった洗濯物を、リビングの横の、小さな庭で干していた。
『……………………ほぇー。雲早えー…………』
正確に言えば干していない。洗濯物片手に、流れる雲を眺めている。
上の空、と辞書でひけば、今の名無しさん、と出てきそうなほど、上の空だった。
ーーー名無しさんはこういうの嫌いぃ?ーーーーーーー
『ギャーーーッ!!あばばばばばばっっ!!!』
名無しさんはせっかく洗った洗濯物を落とし、顔を両手で覆うと、乱暴に擦った。
メローネご乱心事件があってから、照れくさいのと心地悪さを行ったり来たりするような、妙な感覚が離れない。
別に、異性と触れ合うのは初めてではない。彼氏だって、過去にいたこともある。遠い昔のことで、お別れした理由など忘れてしまったが。
まぁとにかくだ。バージンを奪われたわけじゃああるまいし。こんなことで動揺する自分が、野暮ったい気がして、嫌だ。大人になれば、彼氏でもない男と触れ合うことなんて、一回や二回あるんだ。きっと。多分。
(ん?待てよ…………?)
名無しさんは洗濯物を落としたまま目線を斜め上に向けた。
とぉっても大切な事を忘れていた。
よくよく考えれば相手が「メローネ」だということを。
あのいい子なペッシからされた事なら、真剣に受け止め、考えなければいけなかったかもしれない。
が、メローネだ。変態だ。初対面の女性に好きな四十八手を尋ねるやつだ。人の頭皮を舐めるやつだ。目分量で女のバストサイズを当てる天才だ。
(……そうだ!こないだの件に深い意味はない!要するに……なんだ……大人のアレだ……!!)
変態の気まぐれだ。
そう思うと、少し腹立たしいが、同時に肩の力がふっ、と抜ける。
よし、この件はこれでおしまい。
『あーぁ……ま、また洗えばいっか。』
自己完結によって気が晴れた名無しさんは、落とした洗濯物を拾い上げるために目線を落とす。
と、既に落とした洗濯物は、
「…………はい。はたけば大丈夫だよ。」
イルーゾォの手によって拾い上げられていた。