twitterであげていたおはなし。

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翌日以降も、昨日までと何ら変わらずに先輩の教室に行き
告白なんてなかったかのように明るく振舞った。
でも、別れる直前にいつも
「わたしの気持ちは変わってません」と告げることにした。
しつこいって嫌われるかもと思ったけど、言い続けてたら本当になるかもしれないなって
自分への暗示という意味も込めて。

数週間経ったある昼休み、不意に先輩が窓の外を見ながら大きく伸びをした。

「あーあ。もういいや」

投げやりな言葉。
なんか嫌なこと、あったんだろうか。
なんて心配していたら。

「自分を騙しだまし生きるってさ、思ったよりしんどいもんだね」

無理して笑った日が、先輩にもあったのかな。
全然、気付かなかった…すきな人のことなのに。
ってちょっと反省していたら。

「お前相手ならなんとかできるって思ってたけど、大間違いだ」

えっ。わたしのこと?
意味がわからなかったから、先輩の言葉を聞きもらさないように
ごくりとつばを飲んで先輩の横顔を見つめた。

「ファンって言われた時、俺なんかが、って正直戸惑った。
俺、部活でレギュラーでもないし、全然、かっこいいところなんてないのに」

わたしの中ではキラキラと音を立てていつでも輝いている先輩だったけど、
実際の先輩は、そんな風に自分のこと、思ってたんだ…

「でもさ、不思議だな。
部活しんどかったり、勉強でつまづいた時に、お前の言葉思い出すと…
力が沸いてきたんだ。俺を見てくれてる人、いるんだなって」

横顔がゆっくりと動き、ふたりの視線が完全にぶつかる。

「俺も、お前のことすきだよ。言えなかったけど、前から。」

ずっと手に入れたかった言葉が急に手のひらに落ちてきてどうしたらいいかわからない。
何も言えず口をぱくぱくさせるしかできないわたしに、
先輩は非情にもトドメを刺してきた。

「部活終わって、大学受かったら、今度は俺が追いかけようと思ったのに」

すき、と言われるのは幸せなことだけど、
すき、と伝えることの方がわたしの性には合ってるみたいなんです。
だから、いつまでも追いかけっこしましょう。

わたしが先輩に追いかけられるなんて、一生ないのかも。
すぐにでも捕まえて、その腕の中にわたしを閉じ込めてほしいから。
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