twitterであげていたおはなし。2

□勘違いしながらも好きな子を守るツッキーのお話。
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探し人はあっさりと見つかった。
廊下の端、窓の外をぼんやりと見つめてる。
駆け寄って背中をポンと触ると、振り向いた月島くんは眉を上げ、えっ、と驚いた表情。

「あの…さっきごめんね。ありがとう」
「どうしてここに来たの。…山口は?」
「教室にいるよ?」

再び窓の外に視線を戻した彼。
隣に並んだけど何も言われなかったから、そのまま居座る。

「2人で勉強してればよかったのに」
「だって、月島くんどっかいっちゃったから、心配で」

彼は、いつものクールな口調から一変して
少し不安げな声でわたしに問う。

「水をさす奴らいたけど、チャンスだったのに…いいの?」
「チャンス、って?」

さっきの一連の出来事は単なる苦痛でしかなくて、
ラッキーだと思えるようなことは何一つ起こっていない。
…強いて言えば、この手にあるハンカチと月島くんの言葉だけ。

「鈍いね。今なら山口と2人でいられるデショ」

そんなことを言われ面食らう。

「別にそんな…山口くんは友達だし」
「…君、山口を好きなんじゃないの?」

ぽかんとした表情は、今まで見た中で一番彼らしくなかった。
笑ってしまいそうだったけれど必死にこらえ、
ここでなら、と思いなけなしの勇気を振り絞る。

「わたしが好きなのは…
さっきわたしにハンカチ、渡してくれた人だよ」

月島くんは何も言わずに、窓枠に寄りかかる両腕の中に顔をうずめた。
聞きたくないのかもしれないけど、言わせて。
そんな思いで少しずつ解き放っていくわたしの気持ち。

「さっきのね、女子はみんな月島くんのこといいなって思ってて、
多分、わたしが月島くんと話してるのをずるいって言いたかったんだと思うよ。
でも…月島くん本人がかばってくれるなんて思わなかったし、うれしかった」

わたしはそんなあなたを、見てました。
大好きです。

伝えるとスッキリと胸の中が落ち着いた。
これ、ありがとうとハンカチを彼の手に返して教室に戻ろうとすると、
ブレザーの裾をぐいっと引っ張られ足止めを食らう。

「待って。…僕、まださっきの、返事してないんだけど」

ボソボソと言った後、まっすぐにわたしの目を見て
彼は自分の思惑を全て明かしてくれた。

…君と楽しそうに話す山口を、羨ましいと思ってた。
だから、割り込んでしまった。
2人で話せている時、山口には悪いけど帰ってこなくていい、なんて思ってたし。
でも、君が山口といい感じになりかけてて幸せそうだったから
それでも構わないって思ってたんだ。
なのに、あいつらが何かよくわからないケド、君を泣かせるから。
許せなくて怒鳴りつけてやっただけ。

くすっと笑ったらジロリと睨まれたけど
その顔はほんのり染まっていて、全然怖くない。

「山口抜きで、ふたりで過ごす時間増やさない?」

それって…

「つまり…君が好きってこと」

ああもう。さっき引っ込んだ涙が堰を切ってあふれ出す。
かっこわるい。絶対に、可愛くない。
そんなわたしに、さっき返したばかりのハンカチを突き返してくる彼。

「これは、あげる。
今度から涙…これで拭けば」

そっけないようであったかい言葉。
もらったハンカチを目に当てていたら、

「でも、今みたいに僕がそばにいる時は」

そこまで言って、覆いかぶさる体。
ぐっと抱きしめられた腕の中、優しい声が降ってきた。

「…ココ、いくらでも貸すから」


泣きたい時に泣ける場所が、できました。
でもずっと泣き虫でいるわけにはいかないから、強くならなくちゃ。
ポケットの中にできた味方と一緒に、隣にいてくれる君のために。
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