twitterであげていたおはなし。3

□Darling
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清楚に白いフレアスカートか、春らしい小花柄のシャツワンピか。
交互に当ててもなかなか答えは出ない。
鏡の端に映るのは、背後で既に着替えを終え腕組みをした彼。

「ねえ、どっちがいい?」
「さっさと決めろ。どっちだって同じ服だ」

そっけない反応はいつものこと。
仕方なくワンピースを選び、それに合うストールやバッグを物色し始めることにした。
クローゼットをもぞもぞと漁ってお目当てのものをゲットしたわたしに

「俺、玄関にいるぞ」

あくびをしながらそう言い残してドアの向こうに消えていく彼。
一緒に住んでいても着替えを堂々ともこっそりとも見ようとしない。
そんな彼の気遣いや純情さが実はうれしかったりもする。
ひとつ屋根の下で暮らしているとなかなか改めてデートには行かないもの。
今日は久しぶりのデートってことで張り切ってるわたし。
だから、洋服だって悩むのにな。

着替え終わり玄関に向かうと、彼の顔を見て思い出す。

「あ、携帯と財布…」

バッグの中に手を入れるけどそれと思しき感触はない。
彼をちらりと見上げてから背を向けた。

「…いってきまーす」
「さっさとしろよ、本当にドジだなお前」

ため息をつかれてしまうのも仕方ない。
自分で言うのもなんだけど、わたしはちょっと抜けているところがあって。
口は悪いけどしっかり者の彼がフォローしてくれるお陰で、同棲生活をつつがなく送れているのだ。



映画にショッピングと一日楽しんだ後、夕飯はどうしよっか、という話になった。
時間はまだ夕方に差し掛かった頃だから、早めに決めればお店にはすぐ入れるはず。
スマホでおいしそうな飲食店がないか探しながら彼に問う。

「はじめ、何が食べたい?」
「そうだな…」
「和食がいいかな?はじめ、好きだもんね」
「うん…」

なんだか歯切れが悪い。
イタリアンや中華の方がいいのかな?なんて思っていたら
彼は申し訳なさそうにつぶやいた。

「…すげー言い出しにくいんだけど」
「うん?」
「俺は、お前の作った飯が食いたい」
「それでいいの?せっかく出かけたのに…」
「いや、食いたいもんって考えたらそれしか浮かばなくて」

正直手の込んだものを毎日は作れない。
わたしはここ最近仕事が立て込んでいたせいもあって、夕飯を簡単な丼ものにしてしまうことも多かった。
それでも彼は文句ひとつ言わずに全部平らげてくれるのだ。
時間のある休日くらい、彼の好物を作ってあげようと思った。
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