twitterであげていたおはなし。3

□その恋、劇薬につき。@
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豪華なアクセサリーをつけてるとか、整った顔立ちに抜群のスタイルとか。
そういう存在に人は自然と目がいくものだ。
人々の視線を纏って背すじを伸ばして歩く。
人生で一度くらいそんな経験をしてみたい。
でも今の自分にはそうなれる要素は何もなくて。
だったらせめて、誰もが羨む素敵な彼氏を連れて歩きたいって思うのはワガママだろうか。

ホストクラブ通いを始めて約半年。
わたしの行きつけ・Blue Castleは6人しかプレイヤーのいない小規模クラブ。
そしてわたしが初回からずっと熱い眼差しを送り続けているのは
不動のナンバーワン・トオル。
王子様のようなルックス、揺れる栗色の髪、スラッとしたモデル体型に程よくついた筋肉。
いつでも笑顔を絶やさず少しの変化にも気づいて褒めたり、慰めたりしてくれる。
ここに来ればまさに理想の人に会えるのだ。

ホストとお客という関係から恋愛に発展させるのは相当難しいだろう。
でも、自分が女である限り可能性はゼロじゃないと思っている。
たくさん会って、話して、グラスを交わして…
誰よりも多く彼と過ごしていれば、情が移ることだってあるかも。
そんな願いを込めていそいそと今夜も扉を開けるのだ。

「いらっしゃいませ。寒いですね、コートお預かりします」

すっかり常連客となったわたしに、プレイヤーの中で一番新米のユウタロウが声をかけてくる。
半年前に比べると、大分この店の雰囲気に慣れたようだ。
とは言っても、トオルの足元にはてんで及ばないけど。

ソファに案内されると、跪いたユウタロウが眉を八の字にしてわたしを見つめる。

「申し訳ございません。トオルさんは他のお客様がご指名中でして…」
「そっか。じゃあトオルが空くまでヘルプ?ユウタロウが入ってくれるの?」
「あっ、すみません…俺、この後お客様が来店予定でして。今日はアキラがヘルプに入ります」

アキラ。

名前は知ってるし写真も何度も見た。
中性的な顔立ちに艶のある黒髪の子だ。
でも実は、この半年間一度も接客してもらったことがない。

向こうのテーブルで、何度か見かけたことのある派手目の女性がトオルと楽しげにしている。
テーブルの上に並ぶボトルの種類や数を見る限り、
きっと彼女はトオルの抱える常連さんの中でも一番の太客。
単なる遊びなのか本気なのか知らないけど、ライバルであることは変わりない。
トオルがこちらに来てくれたら、あれよりもいい笑顔を引き出してみせると心に誓った。
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