twitterであげていたおはなし。3

□その恋、劇薬につき。B
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初心に返ってトオル。
たまには変わり種もいいかなってユウタロウ。
そんな風に指名をコロコロ変えながら、わたしのホスト通いは続いた。
トオルの時と作戦を変え、ずーっとべったり指名することをやめたのは単に気を引きたかったから。

他のホストと話している合間に、こっそりアキラを盗み見るのが楽しみになっていた。
ごくたまに目があった時はすーっと目をそらされてしまったけれど… 見てたってことはわたしのこと、気にしてくれてるのかなって心の中でほくそ笑んでいた。
わかってます。つくづく嫌な女、悪い女だと。

数回ぶりにアキラを指名した時に今日はアキラの気分だったから、と伝えると

「これからもずっと、その気分でいてくれたら嬉しいんですけど」

なんて言われた。
セールストークだとしても…可愛いこと、言ってくれるじゃないか。
じらすつもりで指名のインターバルをわざと長くとっていたのだけど、もっと話したいという気持ちは抑えきれなかった。
そもそも、わたしの最終目的は「アキラを落とす」なのだから、やっぱり遠くから観察しているだけでは物足りない。
それからは徐々にアキラを指名する頻度を上げるようになった。

「最近、来店多いですね」
「そう?今までどおりだよ」
「会えるから、うれしいですけど」

お世辞でもいい。隣にいて、声が聞けるだけでこんなにも人は満たされるんだということをアキラに教えてもらった気がする。

「あ、髪の毛…何かついてる」
「えっ」
「…はい、取れました」

深い意味もなく厚意で伸ばされたであろう手が髪に触れただけでも意識してしまう。
君は、そんなわたしにきっと気づいていないんだろうな。


――――
「お話するようになって結構経ちますね」
「そうだね、半年ぐらい?」
「なんか、ここのところ週3くらいで会ってますよね」
「かな?」
「前は全然俺のこと見向きもしなかったのに」
「アキラの腕が上がったんじゃない?」
「俺が、あなたを楽しませられてる、ってことですか?」
「そういうことにしといてあげる」

ちょっとだけお姉さん風を吹かせてみた。
でも、君はそんなことお構いなしで、

「よく会うせいか、色々気づきます」
「何に?」
「あなたの変化に」
「わたしの?何も変わってないと思うけど…ああ、もうすぐ歳はとるけどね」
「この前吹き出物が出来てたのが治った」
「あのねえ、アキラくん?女子にそういうこと言う?しかもさりげなく吹き出物って。 微妙に年齢を強調させる言い回しに変えるとかなんなの、もう…」
「治ったってことは、ちゃんと食べて寝られてるんだなって思って」
「えっ」
「肌きれいなのに、もったいないなと思ってました。でも今はお仕事とか生活がうまくいってるってことですよね?なら安心」
「…っ、」
「あなたが元気なのが、一番うれしいから」

そうやってわたしの心をぐるぐるとかき乱してくるから敵わないんだ。

この数ヶ月での自分の感情の変化は、もう見過ごせないほど明らかだった。
会う度に蓄積していくアキラを欲する気持ち。つい2〜3日前に会ったのに、もう会いたくなっている中毒性。
彼はまるで劇薬のように心を蝕んでいく人だ。

本来の目的であったはずの「みんなに見せびらかすための彼氏にしたい人」ではなくアキラはわたしにとって「好きだから会いたい、追い続けたい人」になっていた。
この心は紛れもなく純粋に『恋』だと思う。 お金を払って一緒に過ごしているホスト相手に純粋な恋、なんて言ったら笑われるんだろうけど。
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