twitterであげていたおはなし。3

□狂犬ちゃんを振り回す自由奔放な彼女のお話。
1ページ/3ページ

待ちに待った放課後。
自分の教室を飛び出し、ふたつ向こうの教室に。こちらのクラスも既に帰りのホームルームを終えたらしく、席でおしゃべりに興じる人、仲間を誘って帰ろうとしている人…と、とても賑やか。教室の中程にお目当ての人物を見つけたわたしは、肺に空気を思い切り吸い込んで一石を投じた。

「ケンちゃーん!」
「…あん?」

ネクタイをぐっと緩めシャツのボタンの上ふたつを開け放していた彼がその手を止めて、ドスのきいた声を発した。きっと生活指導の先生に注意でもされたから、ボタンも閉めネクタイもきちんと結んでいたのだろう。
向けられた鋭い目もなんのその。そしてみんなのあっけにとられる顔にも慣れっこだ。机の間を縫うように進み彼にたどり着く。

「ねえ、今日部活休みでしょ?一緒に帰ろ!」
「……おう」

素直に帰り支度を始める彼の姿に周りでヒソヒソ声。

『京谷が……従ってる!?』
『あの子何者なんだ』
『バッカ、知らねえのかよ。彼女だ彼女』

そんな声にくるりと振り返った彼は、チッと強く舌打ちをしてクラスメイトを一瞥する。ひえっ、と声を上げて縮みあがる彼らが少し気の毒だ。

「…帰るぞ」
「うん、行こう!」

彼の手を取り意気揚々と教室を出る。その手は振り払われることはなく、むしろしっかりと繋がれている。うれしさから廊下を跳ねるように歩くわたしを怒ることもなく、ただ無言でついてくる彼。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ