twitterであげていたおはなし。3
□狂犬ちゃんを振り回す自由奔放な彼女のお話。
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友達にはこう言われた。
“狂犬のお散歩係”
何とでも言えばいい。周りから怖がられていようが嫌われていようが、わたしは彼の隣を誰にも譲るつもりは毛頭ないのだ。
ケンちゃんこと京谷賢太郎は中学の時からつきあっている彼氏。バレー部の試合を見に行った時にダイナミックな得点シーンに一発で心を奪われた。告白した時はうぜえとかうるせえとか煙たがられ軽くあしらわれてしまったけれど、持ち前のプラス思考と押しの強さでなんとか彼の隣を手に入れ今に至る。
昇降口に向かいながら斜め後ろの彼に話しかけた。
「どこか寄り道したいな〜。ね、最近部活どう?楽しい?」
「…別に、普通」
「そっか。みんなとうまくやれてるんだね」
「普通、って言ったべや」
この場合の『普通』は何事もなく過ごせているってことだから安心。上級生と衝突して以来部を離れた彼だけど、夏の終わりには約1年ぶりに復帰を果たしていた。実は、彼のチームメイトの矢巾が復帰までの空白期間にわたしに尋ねてきたことがある。
「なあ、京谷のやつ…どうしてんの」
「さあ?知らない」
「知らない、ってお前彼女だろ?」
「知らないものは知らないもん。気になるなら本人に直接聞いてみたら?」
「……そこまではするつもり、ない」
いつもケンちゃんにウザイほどべったりだと自覚しているわたしだけど、むしろこういうことは触れないで見守る方がいいかなと思っていた。
バレーをしている彼はかっこよくて大好きだったから、本音を言えば早く戻って欲しい。でも下手に『戻りなよ』なんて言ったらご機嫌を損ねてしまいかねないし。バレーのことに関してわたしは素人だから、そっとしとくのが一番かなと判断した。
最終的にケンちゃんは自分から復帰の一歩を踏み出したのだから、わたしの選択は間違ってはいなかったと思いたい。ただ、その復帰も矢巾が言うには、失礼極まりない態度で先輩方をイラつかせお世辞にもいい雰囲気ではなかった、ってことだけれど。